Patient №3 生徒会長

僕らの学校には生徒会がある。

1年~6年の各クラスの学級委員が、生徒会のメンバーで、生徒会長は、6年の学級委員の誰かがやることになっている。

今年の生徒会長は、勉強も出来て運動もできて、おまけにカッコよくてモテモテの、6年生のお兄さん、沖田克己君だ。

何でも沖田君の家はうちのクラスの転校生、手塚君の家の近くみたいで、たまに一緒に居るのを見かける事がある。



「よっ、凌士」

「あっ、克兄かつにい。あは、もうクラブ活動は終わったの?」


沖田君と手塚君は、親同士も仲が良いらしく、2人はいつも、下の名前で呼び合っている。

・・・・羨ましいなぁ、沖田君。僕も早く、手塚君と仲良くなってお話してみたいんだけどな。


サッカークラブの部長でもある沖田君は、部活動が終わって一休みしていたようで、手塚くんは小走りに近づくと、沖田君の隣に並んで座った。


「すごい汗だね・・・・あはっ、お疲れさま」

「うん、今日はちょっと力が入り過ぎちゃったみたいだな、あはっ」


ん?

という感じで、沖田君は首を傾げた。

イケメンは、首を傾げてもカッコいい。

その証拠に、沖田君ファンクラブの女子たちが、遠くでワーキャー声を上げている。


「どうか、した?」

「ううん、何でも、ない。うん、気のせいだな、あはっ」


手塚君に向けた笑顔が、すぐにまた、怪訝そうな表情に戻る。

分かる、分かるよ、沖田君。

沖田君なら、周りから見ればそんなに違和感は無いとは思うけど・・・・でも、気になるよね。


「あ、僕今日、早く帰らないといけないんだった。じゃ、克兄かつにい、僕先に帰るね、あはっ!」


いつもと変わらないにこやかな笑顔を見せて、手塚君はそのまま帰って行った。


「あ、うん・・・・気を付けてな~」


入れ替わる様に、1人の女子が、沖田君の元へと駆け寄る。


「あの、沖田君・・・・これっ!」


遠目に見ても分かる、それはきっと、ラブレター。


「ありがとう、あとで読むね、あはっ」


ああ、またも犠牲者が・・・・


僕はそっと、その場を後にした。

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