Patient №2 担任の先生

僕らのクラスの担任の先生は、清野せいの先生という、母さんと同じくらいの年の女の先生だ。

でも、若く見えるから、『母さん』というよりは、『姉ちゃん』のような感じ。

・・・・ちょっと怖めの『姉ちゃん』だけど。


「立川君」


帰りの会が終わった後、清野先生が学級委員の立川君を呼んだ。


「あは、先生。なんですか?」

「・・・・立川君?なんか、いつもと感じが・・・・」


清野先生は目を丸くして立川君を見ている。

分かる、分かるよ先生。

僕も同じ気持ちだよ。


「先生、どうかしました?」

「ううん、なんでもない。今日のプリント、全部集めておいてくれた?」

「もちろんです、あはっ」


清野先生は、今度は何とも言えない顔をして、立川君を見た。


「立川君?イメチェン、かな?」

「何のことですか?」


立川君は立川君で、キョトンとした顔をして、清野先生を見ている。

きっともう、立川君はすっかり『あはの呪い』にかかってしまったんだ。

僕はそう思った。


「先生、さっきから変ですよ?大丈夫ですか?じゃ、プリントはこれで全部なんで。僕もう帰りますね、あはっ」


1人残された清野先生は、立川君から渡されたプリントの束を手に、もう片方の手をおでこに当てて暫くその場に立っていた。


「おかしいのは、私?・・・・疲れているのね、きっと。少し休もうかな・・・・あは。・・・・・あは?」


先生はその場に、しゃがみこむ。


ああ、ついに清野先生にまで。


僕はそっと、教室を出た。

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