あはの呪い

平 遊

Patient №1 学級委員

「あは、立川君、おはよう」


教室に入ると、手塚君はすぐに、立川君に声を掛けた。

立川君は、僕のクラスの学級委員。

だからという訳ではないけれども、立川君はとても真面目で、いつも早くに学校に来て、勉強をしている。

え?僕?

僕は、まぁ・・・・遅刻しないようにって、母さんに早めに家を出されるから、割と早めに学校に来てはいる。勉強なんかしてないけどね。


「ああ、手塚君、おはよう。あれ?今日なんかいい事あった?なんだか嬉しそうだね」

「あはっ、分かる?」


立川君は、学級委員だから、という訳ではなく、周りの人を良く見ているせいか、小さな変化によく気付く。

・・・・僕なんか、今は手塚君しか見てないから、手塚君のことしか気付かないのに。さすが、立川君だ。

あ、もちろん僕だって、手塚君がなんだか今日はやけに嬉しそうな顔をしている事には、気付いたよ?


「あのね、今日はちょっと回り道をして来てみたんだけど。すごく綺麗な花が咲いている場所があるのを見つけたんだ」

「そっか」

「だから、朝から嬉しくなっちゃったんだ、あはっ」

「それは良かったね。でも、基本的に通学路以外は通っちゃダメだから、気を付けなきゃダメだよ、あは」


この時僕は、立川君の言葉に奇妙な違和感を覚えた。

多分、立川君も同じだったんだろう。

不思議そうな顔をして、首を傾げている。


「あれ?立川君、どうしたの?」

「え?ううん、何でもない。それより、昨日の宿題、やってきた?」

「うん、もちろんだよ、あはっ!」

「そっか、さすが手塚君だな、あは」


またも立川君は首を傾げているが、手塚君は立川君に小さく手を振って、自分の席に向かう。


「・・・・あは?」


立川君の小さなつぶやきが、僕にも聞こえたような気がした。

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