あはの呪い
平 遊
Patient №1 学級委員
「あは、立川君、おはよう」
教室に入ると、手塚君はすぐに、立川君に声を掛けた。
立川君は、僕のクラスの学級委員。
だからという訳ではないけれども、立川君はとても真面目で、いつも早くに学校に来て、勉強をしている。
え?僕?
僕は、まぁ・・・・遅刻しないようにって、母さんに早めに家を出されるから、割と早めに学校に来てはいる。勉強なんかしてないけどね。
「ああ、手塚君、おはよう。あれ?今日なんかいい事あった?なんだか嬉しそうだね」
「あはっ、分かる?」
立川君は、学級委員だから、という訳ではなく、周りの人を良く見ているせいか、小さな変化によく気付く。
・・・・僕なんか、今は手塚君しか見てないから、手塚君のことしか気付かないのに。さすが、立川君だ。
あ、もちろん僕だって、手塚君がなんだか今日はやけに嬉しそうな顔をしている事には、気付いたよ?
「あのね、今日はちょっと回り道をして来てみたんだけど。すごく綺麗な花が咲いている場所があるのを見つけたんだ」
「そっか」
「だから、朝から嬉しくなっちゃったんだ、あはっ」
「それは良かったね。でも、基本的に通学路以外は通っちゃダメだから、気を付けなきゃダメだよ、あは」
この時僕は、立川君の言葉に奇妙な違和感を覚えた。
多分、立川君も同じだったんだろう。
不思議そうな顔をして、首を傾げている。
「あれ?立川君、どうしたの?」
「え?ううん、何でもない。それより、昨日の宿題、やってきた?」
「うん、もちろんだよ、あはっ!」
「そっか、さすが手塚君だな、あは」
またも立川君は首を傾げているが、手塚君は立川君に小さく手を振って、自分の席に向かう。
「・・・・あは?」
立川君の小さなつぶやきが、僕にも聞こえたような気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます