ラノベ嫌い
白川津 中々
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「絵のない漫画じゃないか」
彼はライトノベルをそう評し、「やはり純文学だよ」と得意気な顔をする。彼にとっての小説とは純文学を指すもので、ライトノベルは別枠のようだった。
それ自体は別にどうでもよかったのだが、どうにも彼は、ライトノベルを蔑する事により自分が高尚である事の証明を試みようとしているように思えた。小難しい作品を自分は理解している。だから凄い。という論法である。
彼が本当に純文学を理解しているのかどうかはこの際置いておいてもいいだろう。僕にとっても彼にとってもどうでもいい事なのだから。
兎角、名だたる文学に触れた自分はライトノベルなど読まない。真の物語とは文壇の中にあり。とでも言いたげな表情で声高に「昨今の小説界隈は〜」と講評してしまえるのは大した品性だと思ったし、それを聞いて一言、「如何なる作家も君よりは優れているよ」と喉まで上がってきたが、なんとかまろび出るを食い止める。口は災いの元。それに、そもそも言っても聞かないだろう。無駄な事はしない方がいいので、やはり黙っているのが一番である。
別に本なんて面白ければなんでもよく、読みたいものを読めばいいのになという言葉を巡らせながら、僕は彼の話に付き合う。彼が実際に本を読んでいる姿は未だ見た事がない。
ラノベ嫌い 白川津 中々 @taka1212384
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