おとぎ話⑤
これは遥か遠い昔におこった、誰にも伝わっていないおとぎ話の続きです。
海に身投げした人魚姫は泡になって消えてしまいました。ですが、海よりも深い愛を持ったまま身投げした彼女の魂は、この海と強固に結びついてしまったのです。
それはある意味では呪いでした。
海の精霊に預けた人魚姫の体は、海の底にある大貝の中で眠っていました。泡に包まれた彼女の魂は波に揺られながらふわりふわりと漂い、朽ち果てることのない彼女の肉体の中に還りました。そして大貝の蓋は閉じられ、人魚姫は赤子の姿になってまた王子がこの世に生まれてくる時をずっと待ち続けていました。
人魚姫と王子の魂は呪いに囚われてしまいました。王子がまた新たな肉体を得てこの世に生を受けると、人魚姫の魂もまた、大貝の中で目覚めます。王子様の見目は生まれ変わる度に変わりますが、それでも引き合う魂は時を越えて二人を結びつけました。人魚姫はこの世に生を受ける度に、いつも同じ人に恋をしました。
恋をして何度も地上に上がり、そしてまた愛の為に何度もその命を散らしていきました。
何度も何度も。
最愛の人の幸せを願いながら。
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