おとぎ話②

 人魚姫は船に乗った王子様の姿をずっと見つめていました。しかし、突然嵐がやってきて船は転覆し、乗っていた人々は海に投げ出されてしまいました。王子様が海に落ちたのを見た人魚姫は大急ぎで彼を助けあげ、浜辺までつれていきました。


「王子様、お気を確かに!」


 人魚姫は王子様に声をかけ続けました。するとその時、浜辺の向こうからひとりの娘がやってきました。娘の姿を見た人魚姫はびっくりして海へ身を隠しました。


 娘は浜辺に倒れている王子様を見つけ、慌てて助け起こしました。娘の声で目を覚ました王子様はぱっちりと目を開け、娘に向かって微笑みかけました。


「君が僕を助けてくれたのかい? ありがとう」


 娘はうなずき、王子様を連れてどこかへ行ってしまいました。王子様を助けたのは自分だと知ってもらえなかった人魚姫は、悲しい気持ちで海へ帰りました。



※※※


 海へ戻った人魚姫は、毎日王子様のことを考えていました。人魚姫は、次第に人間の姿になって王子様の側にいたいと思うようになりました。

 そこで、人魚姫は魔女のところへ行き、人間にしてほしいと頼みました。魔女は人魚姫に薬を手渡して言いました。


「ではお前の人魚の体と引き換えに人間の体を与えよう。だが、王子から愛をもらうことができなければ、お前は人魚には戻れず海の泡となって消えてしまう。ゆめゆめそれを忘れるな」


 人魚姫は全ての条件を吞み、人間になることを決めました。夜の浜辺に座り、人間になる薬を飲んだ人魚姫は、いつの間にか眠ってしまいました。


 しばらくして目が覚めると、傍に王子様がいて、人魚姫の顔を覗きこんでいました。


「大丈夫かい? どうしてここにいるの?」


 人魚姫は答えようとしましたが、どう答えたら良いかわかりません。困ったように王子様の顔をみあげると、王子様はにこやかに微笑みました。


「ではお城においで。一緒に暮らそう」



 こうして、人魚姫は人間の世界で暮らすことになったのです。

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