感傷リサイクル業者

第1話

　ゴミ拾いしてるんですか？

　拾い集めてるのは確かだがゴミじゃないな。

　じゃあ何を集めてるんですか？

　人々が落としていった感情。思い出とか、感傷とか、そういうものさ。夏の終わりの海岸に落ちてる花火からは特に良質なヤツが取れるんだ。

　それをどうするんですか？

　所謂アーチストってやつに売るのさ。そういうのを集めて、奴らは人の心を掴む歌を作るんだよ。

　その歌を聞けば失った物を取り戻せるんですか？

　さすがにそれは無理だよ。一度失ったら二度と手に入らないさ。失った事に気づいて、切なくなるだけさ。まあ、それが良いんだろうけどね。

　……じゃあ、僕のも引き取ってもらえませんか？

　それは無理だな。

　何故？

　拾うには、まず落ちてないと駄目だろ？あんたのその罪の意識は心にしっかり貼り付いて、ちょっとやそっとじゃ落ちねえよ。

　……確かに。愛した人を殺したんだから当然ですよね。虫の良い事を言ってしまいました。すいません。

　一生抱えて生きな。それは誰かに渡しちゃいけない代物だ。言っとくが自殺なんてしても無駄だぞ。そっちは別の業者だ。

　……そうですか。