給糧艦 間宮

 整った港湾都市――ドックや岸壁などの港湾設備は勿論、飲食店などの充実した都市機能を持つ都市が少ない太平洋を活動の場とする海援隊は長期間異国で活動するため、士気の低下が著しい。

 特に娯楽が少ない上に、長機の行動で食料が保存食料のみになり、メニューが貧相になる。

 栄養学上もバランスが悪く、栄養状態が悪化すれば活動にも支障を来す。

 そこで、遠隔地でも豊かな食事を、特に甘味などを供給して士気の向上を行うことを目的に鯉之助の提案で生まれたのが給糧艦間宮だ。

 一万トンの巨大な船体に巨大な冷凍庫と冷蔵庫を保有し、食料工場を有する間宮は一万人の将兵に四週間分の食料を与える事が出来た。

 艦内には屠殺工場も作られ、飼育していた家畜をそのまま屠殺し新鮮な肉製品を供給することが可能だ。

 それだけでなく、こんにゃくや豆腐、油揚げ、お麩などの日本固有の食品まで加工しており、海援隊員に日本の味を提供した。

 中でも喜ばれたのがアイスクリームなどの嗜好品であり、最中、饅頭、羊羹が製造された。

 特に間宮の洗濯板と呼ばれる、あんパンは絶品であり海援隊の中でも人気が高くすぐに売り切れる。

 味は非常に良く、羊羹などは東京の老舗、虎屋の羊羹以上に上手いと絶賛される程だ。

 このように味が良いのは、一般の職人を高給で雇っているためであり、材料も厳選された素材を使い、味に気を遣っていたからだ。

 間宮が入港すると海援隊の将兵が一目散に柄をこぎ出すのがお約束になるほどである。

 日露戦争でも勿論出撃、海軍の艦艇にも振る舞われ、無数のファンを生み出した。

 そのため菓子の争奪戦が激しくなり、海軍と海援隊の中が一時険悪になるほどだった。

 間宮の影響は大きく、士気の維持に絶大、と海軍は評価し間宮の同型艦を海援隊に発注し自ら配備するに至った。


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https://kakuyomu.jp/works/16816700426733963998/episodes/16816927861744628798

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