第二話 出会い

 おろろろ・・・ おろろろ・・・・


 耳をそばだてる・・・獣の気配、殺気がビンビン伝わってくる

「詩!できる限り僕の近くにいて!」


 野犬だ、、、複数だったら厄介だなとか甘いことを考えていた。

 だが現れたのは生まれて初めて見た何とも形容し辛い怪物だった。


 ガサッガサッ…思ったより静かにそれは現れた

 足は…なかった・・・ヌチャ・・・ヌチャっと這いずり近づいてくる

 頭を見ると口に鋭い牙がぬっと生えていた。


 その奇妙な姿に恐怖を覚えガタガタ震えていた。。。


 しかもそれは人の言葉を発したのだ。

「おろろろ・・・逃がしませんよ今日のエサはあなた達

 う~ん美味しそうなにおい・・・」


 その瞬間恐怖に駆られて詩の手を引き来た道を逃げ出していた。


「はあっ・・・はあっ・・・はあっはっ」

 二人の息遣いが森にこだまする。


 あの怪物を見て逃げ出した後も詩に話しかけることもしなかったそんな余裕もなかった。

 初めて死を覚悟した。でも詩だけは守りたかった。


 ずるっ・・・ずるっずるっ


 足は無いはずなのに怪物はすごいスピードだ。

 その時詩が躓いた《つまづいた》

「キャッ!」 ズザァー


 その瞬間僕は詩を守るように身を詩の前に出して壁になった。

 相手は今にもここに来る!迫っている!

 カシャン…

 その時僕の頭の撃鉄が落ちた。


「やるしかない!」

 どこかが痛む・・・ガンガンする・・・・ヒリヒリする

 過去にもこんなことがあった気がする・・・

 なんでだろうそんな気がする。


 その時周りに青い光が展開したその後

 プツッ

 と意識が落ちた

 まるで昏睡に陥るように。

 ゆっくりとゆっくりと・・・。


 母さん行ってくるよ・・・

 行ってらっしゃい・・・


 そんなどこにでもある遠い記憶。

 これは誰の夢だろう・・・

 周りの景色は見たことないものばかりで

 高速で走る物体や人が入った箱

 明かりが灯るスイッチ・・・・


 君は誰・・・

 僕は君だよ・・・

 早く起きて

 いっちゃだめだよ・・・


 ねえ起きてよ

 じっちゃん・・・


 目覚めると僕の手を握り締めながら

 眠っている詩がいた。

 頬に涙がある、また心配かけてしまった。


「ここはどこだ…」

 草のにおいが香る庵だった。

 見知らぬ場所だった

 その時詩が目覚めて抱きついてきた

「目覚めたのね!もうじっちゃん・・・心配したんだから!」


「詩いたい…いたいよ、心配かけてごめんありがとう」


「あっごめん。思わず強くしちゃった、もうじっちゃんが心配させるから

 悪いんだからね!」

 と涙を拭いながら僕を解放した。


 その時庵の扉が開き

「おお~目覚めよったか!カカカカカ」

 と背筋がピーンと伸びた老人が入ってきた。

「もう怖がることはないぞあの怪物はここにはおらん。

 正確に言えばえさを与えて元居た場所に返してあげたんじゃがな~カカカ」

 急に元気な老人が登場して怪物はいないと聞かされて思わず僕は唖然としてしまった。


 怪物よりも自分に怖がってる気配を感じたのか


「いかんいかん名乗らなければのぉ。わしは鬼哭じゃ鬼哭仙人じゃここらでは有名人じゃカカカ」


 老人の明るい声色にホッとしたのかまた体は

 眠りを求めて・・・そして意識はガクッとくらーい闇の中へ落ちていった。





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詠う世界 万葉小町 @elaysia

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