第33話 対峙
次の日
亜弥から聞いた〇〇大学病院心療内科のある場所を調べて、朝から行った。
何時に出勤してくるのかもわからないから、とにかく早く行って、待ち構えることにした。
顔もわからない。
だけど、会えばわかるんじゃないかって気がしていた。
入口近くの生け垣のコンクリートのところに座り込んで、来る人来る人を見ていた。
20メートル先の辺りで、男が立ち止まった。
コイツだな!
俺も直感的にそう思って、立ち上がった。
男はにこやかにこちらに向かって歩きながら、
「そちらから訪ねて来てくれるとは思ってませんでしたよ。こちらは、アナタのことをだいぶ必死に捜しましたけどね~。
じじ様はお隠れになるのが御上手で、見つけられませんでしたけど」
と、話しながら近づいて俺の前で止まった。
俺も背は高くて179センチだけど、ちょっと見上げる感じだから、185センチくらいだろうか。
センター分けのサラサラヘアー。
切れ長の目。
高い鼻。
とにかくバランス良く整った顔。
由芽ちゃんが言っていたように、イケメン先生だった。
20代後半か30代前半と言う感じ。
「いつぞやは、テニスコートでお会いしましたね。私もあの時は、少々忙しかったので、お話できませんでしたけど。
その時よりは、幾分か状況を理解できたと言ったところでしょうかね」
そう言って微笑んだ。
「亜弥に何をした!!」
は?と驚いたような顔をした。
「質問の意味がわかりませんが。あや とは どなたでしょうか?」
「小西亜弥! 小西由芽ちゃんのお姉ちゃんだ!」
「ほ~~。これは、また、意外なところから」
そう言うと、アハハと笑った。
「先ほど聞かれた質問の答えは、
『なにもしていない』ですね。
彼女は今、由芽さんに付き添って、アメリカに行っていると思いますが。
そうですか、アナタがね~。
彼女にフラレたのを、私がチカラを使ったからだと思って乗り込んで来たんですか?
自分の至らなさを棚に上げて、よくもまぁ。
私はそれほど暇ではないので、どうでもいい女子大生の夢に入ったりしないですよ」
「じゃ、由芽ちゃんの夢に入ったのは、何が目的なんだ!!」
「ほ~~。極々 稀に夢の中で私を認識できる人がいるんですが、夢が醒めれば忘れてしまうのですがね。一般的にはね。
由芽さんは覚えていたのですか?それは、また興味深い。
さすがに、50万人に一人の難病指定なだけありますね。いろいろとイレギュラーな子ですね」
「答えろ!!」
「まぁ、私は医師なんでね。ケアが必要な子には、ケアしますよ」
「2億5000万円が目的なんじゃないのか?」
「あははっ!!ゆめちゃん基金ですね。
あれは、私も匿名で寄付しましたよ。300万ほどね」
「さ、300万!!」
「ひとつ私からあなたにアドバイスして差し上げましょう」
さっきまでの笑顔は消え、俺をにらみつけた。
「敵と対峙するのに、ノープランで行かないことです。絶対に勝てませんから」
じゃ、と、軽く手をあげて、奴は病院の中へ入って行った。
第1章 終
他人の夢を操れるチカラって地味に無敵じゃね? 彼方希弓 @kiyumikanata
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