死ぬわっ!?
「死ぬわっ!? いって……」
身体中が悲鳴を上げてるな……こんなの母さんの技が綺麗に入った時以来だ……
なんで、こんなところで気を失ってるんだ?
「うぅ……」
俺から少し離れたところにアリスがうずくまっている。ダメージがあるみたいだが、生きているようだ。
「いてて……なにがあったんだ?」
俺は記憶を辿り、少しづつ思い出した。
地面に打ち付けられる少し前に戻る。
バタン、といきなり扉が開いた。アリスも俺も触れてすらいないにも関わらず。
扉の奥は広い空間になっており、その奥にはさらに扉があった。それ以外には特に特筆することはーーいや、広間の中心に犬が一匹いた。
その犬は柴犬のような姿で見る者全てが愛くるしいと思う姿であった。
俺も犬は嫌いではないし、可愛いと思った。
だが、しかし、それとは裏腹に俺の体は勝手に戦闘態勢をとり、剣気を身体に身に纏わせていた。戦闘態勢を取ったその一瞬後に
「ーーッ!?」
ああ゛!? なんだ、この威圧感!?
「わん」
「ーーアリスッ!」
犬が手を上げ、振り下ろす。ただ、それだけ。たったそれだけしかしていなかった。
しかして、俺の体はまたもや勝手に動いた。アリスを蹴り飛ばし、剣を構えすぐさま振り抜く。
出雲一刀流参の型反転乃剣
出雲一刀流の剣技の中で数少ないカウンター技の一つである反転乃剣を特に何もないのに前に向かって全力で放った。
「グフッ……」
扉は勢いよく閉まり、俺の体は地面に打ち付けられながら後方の壁まで吹っ飛ばされた。
「あぁ……かなり、やばい状況だったな」
あの時、犬は手を振り下ろした。たったそれだけで衝撃波のようなものが生じて、俺たちを襲い掛からんとしていたのだ。
反射的にアリスを蹴り飛ばして、不完全な体勢ながらも反転乃剣で衝撃波の衝撃をそっくりそのままお返ししようと剣を振ったのだ。しかし、反転乃剣が発動して、部分的に相殺したにも関わらず俺は吹っ飛ばされた挙句、気絶していたのだ。
そりゃあ、あんな化け物いたら近づかないわ。無理ゲーである。あれは無理、どう見積もっても今の俺が敵う相手ではない。というか、あんなのに勝てる奴がいるのか?
「ぅう……あんた、よくも……」
お、アリスもダメージ(俺の蹴り)から復帰したようだな。立ち上がり始めた。
「アリス、大丈夫かー?」
「ええ、あんたが蹴ったところ以外は無事よ」
「いやーすまんすまん。仕方なかったんだよ。アレの射線上から外すにはアレぐらいしか方法がなくてな」
俺の言葉にアリスが振り向く。
「なにが、し、かた……」
アリスは俺の姿を見て、言葉を失う。
略奪者の異世界転生〜友人の異世界転移に巻き込まれなかったせいで、異世界転生しました〜 狛夜シロキバ @byakuyatukumo
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