最低保証?

 現在、俺たちは階段を駆け上がったすぐにあった広間(といっても、教室2個分くらい)で話し合っている。広間には、奥に大きな扉が一つある以外には特に通路や小部屋と比べても変わったところはない。


「アリスさんや、アレは何じゃろうな」

「さん付けやめてくれる? 気持ち悪いから。まあ、多分、ボスの間の扉でしょ?」


 だよなぁ。

 俺は苦虫を噛み潰したような顔をしながら、扉を睨みつける。


「どうする?」


 アリスの言葉に素早く思考する。


「今、パッと思いつくのは、

①ボスの間に特攻

②ここで待機

③下に戻って、逆の階段を行く、かな」


 まあ、③一択だと思うが。


「下に戻るのは、ゴブリンたちと戦う必要が出てくるが、ボスと戦うよりは多分マシ、あの中に何がいるのかはわからないし、気配察知も発動してないから、強さもわからないけどおそらく軽くB級以上。流石にC級相当二人でも戦闘になるか、って感じだ」


 C級が通路でエンカウントするぐらいであるB級は最低でもいるだろう。そんな、最低保証はいらない。


「……でも、仲間と合流するなら、ここを通る必要があるんじゃないの?」

「そうなんだよなぁ」


 こっちが戻るルートだったら、下に行ったら遭難するんだよな(そこ、すでに遭難してるっていわない)。


「だが、ここは出来たばかりのダンジョンだ。フロアボスみたいなのもいないと思うんだ」

「つまり、ここが最下層だと思うから、逆に進んだら戻れるかも……ってこと?」

「ああ、外から見たら明らかに上に行くのが戻るルートだと思うが、ここはダンジョン空間がねじれてる可能性もあるしな」


 俺の言葉にアリスは考え込む。

 さっきは言っても仕方ないので言わなかったがダンジョンに物理法則が適用されているとは思えない。死体が消えたり、魔物が生まれたり、質量保存の法則やらエネルギー保存の法則やらみたいな存在だと思っている。

 少し時間が経った後、アリスは顔を上げる。


「私は下に行くのが一番マシだと思うわ。あんたは?」

「俺もそう思う」


 よかった。実は不安だったんだよね。やぶれかぶれでボスの間に行こうって言わないか。

 さて、そうと決まったところでゴブリンをどう巻こうか。

 それをアリスと相談しようとした時のことだった。











 ーーバタン





「わん」


 瞬間、アリスは吹き飛び、俺の体は地面に打ち付けられ、気を失った。


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