……ごめんなさい
少女らを斬った後、軽く探索してから、俺はアリスのいる小部屋の前に戻ってきていた。
少女らのことをアリスに言う必要はないか。とりあえず、戻るか。階段か部屋かどちらから見ていくかはアリスと相談するとしよう。
深呼吸を一つしてから、小部屋の扉を開け放つ。
「きゃ」
あ、なんか突き飛ばした感じが……
小部屋の中に目を向けるとアリスが尻餅をついていた。
え? 俺が悪いの? いやでも、扉の前に立ってたのが悪くない? 確かに、ノックも無しに入ったけど、ここダンジョン……
「……ごめんなさい」
謝っとこ。
「一応洞窟だったし、外から見た感じ上は特に塔のようになってるわけでもなかったから、下に行くのが正規ルートだと思う。だから、一旦、上に行ってみんなと合流したい」
「ええ、流石にここがどこなのかもわからないしね。それで問題ないわ」
俺はアリスに上位種がいたことと階段があったことを伝えた。あのことは適当に誤魔化しておく。
「じゃあ、急いで昇ろう」
「そうね」
俺とアリスが急いでいるのにはわけがある。
俺がゴブリンを殺ってしまったので他のゴブリンが異変を察知して周囲を探索しだすと面倒になるのである。どうせ、皆殺しにするがそれは今ではない。安心マージンは十分にとりすぎるくらいが丁度いい。
支度も手早く(することそんなにないけど)済ませて、気配遮断を用いて、通路を突っ切る。
突っ切っている最中に周囲に気を配ると部屋の奥の気配が若干わか……おっふ。
「急げ」
「え? ちょ……」
先行して階段を駆け上がり、上層に到達する。
少ししてアリスが駆け上がってくる。
「……敵の気配は特にない」
「あんた……索敵系のスキル持ってないでしょ……というか、どういうつもりよ!」
アリスが先程、置いていったことを抗議し始める。
「えーと、先程の戦闘で気配察知スキルを獲得したみたいでな。試しに使ったら部屋の中の気配までわかって……」
「わかって?」
先程の気配を思い出して苦笑いをする俺に先を続けるように促す。
「多分、弱いけどゴブリンの上位種が大体100はいるんじゃないかな」
「は?」
そうなるよね。
「それで急ぐように促してから、前方の罠とかの警戒のために先に行ったってわけ」
「……事情は分かったけど。本当なの?」
流石に上位種100には怯えた様子を見せるのね。
ここで解説。今回はゴブリンの生態2とランクについてだ。
ゴブリンをはじめとする魔物は進化する。種族のレベルが上がり、さらに何かしらの条件を満たせば種族がより上位のものに進化して、それに伴い、存在が変化する。ゴブリン、ゴブリンソード、ゴブリンナイト、ゴブリンキングのようにだんだんと進化をしていく。故に先程の斬ったゴブリンナイトはゴブリン界だとかなりの強者である。俺も剣気無しだと少し厳しい。いや、厳しかった。現状だと剣気なしでも瞬殺と思われる(不意打ちなら)。
次にランクについて説明する。ランクとは一口に言っても多種多様である。冒険者のランク、魔物のランク、商人のランク……etc.色々ある。冒険者のランクは前に説明したので今回は魔物のランクだ。魔物のランクは基本、冒険者のランクと関係がある。まず、冒険者のランクと大体のレベルの関係性だ。
1〜10 F、E
11〜20 D
21〜40 C
41〜60 B
61〜70 A
70以上 S
100 カンスト
と、このようになっている。
そして、魔物のランクはこんな感じである。
F スライム 子供でも倒せる
E ゴブリン 一般人でもタイマンなら倒せる。F級数人もしくはE級一人
D ゴブリンソード E級数人もしくはD級一人
C ゴブリンナイト D級数人もしくはC級一人
B ゴブリンキング B級のパーティ
A ゴブリンエンペラー A級のパーティ
S 測定不能
ご覧の通り、B級から強さの次元が変わる。ゴブリンナイトはC級なのでそれを瞬殺する俺は多分、C級程度の実力はあるのだろう。不意打ちで右手斬り落としてから戦闘してたから、そんなのもんだったのだろう。
さて、予備知識はここまでにして、俺とアリスはどちらもC級相当の戦闘力(現状はよくわからんが)で先程の俺の報告でC級相当もいることがわかっており、よしんばD級相当のみ、いやE級相当だったとしても100は流石に体力的にも精神的にも辛いものがある。これでアリスが流石に怯える理由も分かってもらえたことだろう。
「……ここには来ないの?」
アリスが階段の方に目を向けて、そう口にする。
「……ああ、そこがおかしいんだよな。連中、多分、こっちに気付いてる」
「え!? やばいじゃないの!」
「うん。やばい。やばいんだけど、連中、階段を遠巻きに見てるのか絶対に近づこうとしてないんだよな」
気配察知スキルもあんまり正確には教えてくれないがでもなぜか、ゴブリンが階段に近づかないことはわかる。
「え? なんで?」
「知らないよ。ここに近づきたくない理由があるのかね」
「……ねえ」
不意にアリスが俺の後方を指さす。
「アレじゃないの?」
「言うな。折角、思考の外に追いやっていたのに」
本当、最悪だよ。
アリスが指さした方向には大きな扉が鎮座していた。
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