ある昼下がりの休日の日。
夕日ゆうや
ある日の何げない日常。
「やだ! 緑のたぬきがいぃ!」
「僕も緑のたぬきがいいの!」
女の子と男の子がケンカをしている。女の子は
「こらケンカするな。父ちゃんは赤いきつねだがな!」
ガハハハハと豪快に笑う。
赤いきつねは二つ、緑のたぬきも二つ。合計四つある。
「こらこらお父さんは黙っててね。私が赤いきつねを食べるからあなたたちは緑のたぬきを食べなさい」
宥めると妻の
「お母さん我慢してない?」
けれども子どもは聡い。気がついているのだ。
「大丈夫。私のことは気にしないの」
「はーい」
素直で助かるが油断ならないのがうちの子だ。
赤いきつねと緑のたぬき、合計4つにお湯を注ぐ。
我慢してもらった奈央には感謝している。あとでちゃんと言っておこう。
「三分待つのよ」
奈央がそういうと、子どもたちは時間を読み始めだした。
最後の十秒になるとカウトダウンを開始する。
この瞬間がワクワクする!
はやる気持ちを押さえて待つ。
5
4
3
2
1
さあ、頂こう。
「「「「いただきます!」」」」
みんなで手を合わせて食べ始める。
「あちっ」
一番下の穂香が熱そうに口に運ぶ。フーフーと息を吹き掛け冷ましながら。
「美味しいか?」
嬉しそうに目を細めて訊ねる。
「うん! でもお母さんのハンバーグが好き!」
「僕もハンバーグ食べたい!」
「あら。今夜のメニューが決まったわね!」
クスクスと笑う穂香。
「これより美味しいのを期待しているぞ!」
「プレッシャーがすごいわね。そんなに美味しくできるかしら?」
困ったように指を顎に当てる奈央。
「難しいかもね」
「少しは期待しなさいよ! まったく」
でも赤いきつねも、緑のたぬきも開発者の愛がこもっているから。
「それでも、お母さんのハンバーグは世界一なんだから」
雷飛がそう言うとぱあぁと明るくなる奈央。
「誉めすぎ。でも嬉しいわ」
「ガハハハハ。母さんの手料理はどれもうまいからな。いっそ赤いきつねと緑のたぬきも作ってみてはどうだ?」
目を瞬く奈央。荒唐無稽だったか。
「考えもしなかった。やってみる」
「できるのか!?」
やる気を出した奈央は赤いきつねの厚揚げを食べ、分析し始める。
「かもね。ふふ」
「さすが奈央、俺たちにできないことをやってのける。そこにしびれる。憧れるぅ!」
「ハイハイ。分かったわ」
俺がテンションを上げているときに、諦めたかのように呟く奈央。
俺にとって、この昼飯の時間がなによりの幸せだ。
ある昼下がりの休日の日。 夕日ゆうや @PT03wing
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