なにかを失ったとき、人は立ち止まってしまうものだ。
過去はつねに愛おしく、そして静かに輝いている。
この物語では、そんな過去に囚われていた主人公が、不思議な鍵と紙飛行機に導かれて、前へと進み始める。
飄々とした「鍵」と、優しく、どこか寄る辺ない「紙飛行機」の柔らかい語り。
前を向いてよろよろ歩き始めた主人公のうしろには、もちろん、過去はそのままに輝いている。
人を捕らえて立ち止まらせる過去から、人の心に宿って温かく背中を押す過去へ……主人公の気持ちの有り様の変化によって、過去もまた一層、愛おしく、大切なものに変容してゆく……その瞬間を描く物語です。