第5話
Dランクの依頼として一番多いのは、魔物退治と商隊の護衛だ。
報酬だけで考えれば護衛の方が多いのだが、時間がかかる。
そのため効率化を考える冒険者は両方の依頼を両方同時に受けるものが多かった。
今回俺たちが受けた依頼も、村を渡り歩く商隊の護衛と、近くにある森の魔物の間引きの二つ
その森というのが、龍の墓場を探していたゼピュロス大森林だった。
「魔物退治の依頼が空いていて良かったですね」
「そうだな」
商隊をノール村まで送り届け、俺たちはその足でゼピュロス大森林に入った。
目的は依頼で受けた、ゼピュロス大森林の入口付近にいる魔物の間引きだ。
「こうした依頼を受けられるのも、Dランクの特権だな」
魔物退治自体はEランクでも受けられるが、依頼で倒すのは街の近辺にいる弱い魔物がほとんど。
こうして街から遠く、危険な魔物が多い森に入れるのも、ランクアップの恩恵の一つだった。
「しかし、こんな辺境だというのに人が多い」
辺りを見れば、同業者や騎士が多く見受けられる。
以前から龍の墓場の噂は流れていて、この辺りの依頼は人気があったから本当に運が良かったと思う。
「やっぱり皆さん、龍の墓場を探しに来ているのでしょうか?」
「だろうな。前回もそうだったが、どうやらまだ諦めていないらしい」
龍の素材は鱗一つで一攫千金に値。
冒険者ならたとえ命をベッドにしても手に入れたいと思うものだ。
「こんな場所で龍が眠るわけがないだろう……」
レーヴァが機嫌悪そうにそう呟く。
「今回も休んでいて良かったのだぞ?」
「ふん……龍の墓場探しには協力しないが、依頼は受ける。我も今は冒険者だから当然だ」
意外とプロ意識が強いな。
龍が死ぬときは誰もいない静かな場所を選ぶものだ。
危険な魔物が多いとはいえ、森の入口のような誰でも入ってこれる場所ではない、ということだろう。
「まあ他は関係ない。私たちがやるべきことは森の入口付近にいる魔物の駆除だからな」
弱い魔物は冬前になると獲物を求めて人里にやってくる。
それを避けるために、事前に近隣のノール村から依頼を受けた形だ。
「このままだと、我らが倒すまでもなく駆除されてしまいそうだがな」
「仕方ない、二手に分かれるか」
魔物はいなくなり村は平和になりました。しかし証明出来る素材はありません、では依頼達成にならない。
「レーヴァ、フィーナのことを頼んだぞ」
「主は過保護だのぉ。今のフィーナなら一人でも大丈夫だろうに」
「万が一があるからな」
フィーナも出会ったときよりは強くなり、この森の入口程度の魔物なら倒せるだろう。
だがまだ弱い。
森の中心に行けば行くほど魔物は強くなるし、先日倒したビックフッドなどはBランクの魔物でかなり凶悪だ。
もしなにかの拍子にフィーナが単独で出会ってしまえば、逃げる以外出来ないだろう。
「あの、リオン様もお気を付けて!」
「ふ、誰に物を言っている」
まあ、心配されるのは悪くない。
少し駆け足になりながら森を周回し、魔物を見つけては小さな魔力球で倒していく。
「倒すより、部位を剥ぎ取る方が時間がかかるな」
とはいえ放置するわけにもいかないので、魔術で解体する。
魔物の素材はギルドか商人に持っていけば売れるのだが、剥ぎ取り方で素材の評価が変わってしまうものだ。
元ゲーマーとしては、こういうところで手を抜きたくなかった。
『ウガァァァァァァァ――!』
森の少し奥。
とはいえまだ浅いエリアだと思うが、そこから魔物の雄叫びが聞こえてきた。
「……なんだ?」
声に込められた力は先ほど倒した魔物たちより強い。
「イレギュラーか……仕方あるまい」
放置して村が襲われても困る。
声の方へと向かうと、四人組の冒険者が一つ目の巨人、サイクロプスの群れに囲まれていた。
「見覚えがあるな。ドルチェの冒険者か……」
最初の頃にフィーナに絡んできたやつらだ。
元々Bランクの冒険者パーティーで幅をきかせていたらしいが、俺にやられてからは大人しくしていたはず。
この森の入口付近にいるような奴でないので、奥から逃げて来たのだろう。
「あ、アンタは⁉ 助けてく――」
俺に気付いて声を上げた瞬間、サイクロプスの棍棒に吹き飛ばされた。
それによりこれまで保っていた均衡はそれで崩れ、一気に劣勢となる。
「
俺は魔力球を飛ばし、すぐに全滅させる。
次々と殺されていくサイクロプスに冒険者たちは圧倒されているが、気にする必要はないだろう。
「おい、大丈夫か?」
「あ、あぁ……だがこいつが……」
吹き飛ばされた冒険者は、生きているが息も絶え絶えだ。
このままでは時間の問題かもしれない。
「このパーティーに回復魔術が使えるやつはいないのか?」
「いねぇよ! やべぇ、どんどん顔が青く……」
「……仕方あるまい」
回復魔術は得意ではないのだが、気休め程度にはなるだろう。
瀕死の冒険者に魔術をかけつつ、フィーナがやってくるのを待つしか無い。
「大丈夫なのか⁉」
「私の魔力に気付いた仲間が来れば問題ない」
腕は変な方向に曲がり、全身も骨折している。
骨が内臓に刺さっていたら、俺ではどうしようもないが――。
「ん?」
少し離れたところからフィーナたちが近づいてくるのが見えた。
「……お前たち、運が良かったな」
「え?」
「私の仲間がやってきた」
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