終演

素素sai

終演

夜、凍えているから蓋をした。

昨日までは、真っ黒な空とピンクの砂だけが無限に広がっていたはずだ。

君はどこからきたのか。どうして目を覚まさないのか。

星が降ってくる。ガラスの粉末が舞い上がる。なにも見えなくなる。

光が残る星をさがす。随分、離れてしまった。

風が吹く。強く強く吹きつける。渇いた星がカラカラと流れる。

流れる方へ歩く。君にかぶせた蓋が見えた。

足元を見る。落ちた星が割れている。そっと断面に触れる。固くて脆い。

不完全な星の手を折って口に含む。君の口にも含ませる。

空洞の眼にピンクの砂を落として、弱く輝く星を埋める。

これで帰れるはずだ。

さようなら、愛しいひと。


「ぼくも帰るよ」


夜、凍えないように蓋をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

終演 素素sai @motomoto_rororo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ