第30話【はなむけ】

 きみは今、どこにいてこれを読んでいるだろうか。

 これは、ぼくから贈るきみへのはなむけだ。旅立つのは、ぼくの方だけれど。

 ぼくが最後に残した足跡をきみに寄越すのは、押しつけがましいのかもしれない。それでも、ぼくがきみのことを一顧だにせず旅立ったと思わないでほしいと思った。ぼくは、最後まできみに感謝するだろう。ぼくの行く道は途切れてしまったけれど、きみの行く道がつらくても険しくても、ぼくの存在した事実が、少しでもきみの一歩を踏み出す助けになればいいと願う。

 ぼくの愛した友たちへ。

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【ノベルバー】霜月のための三十の諸相 藍川澪 @leiaikawa

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