積読

白川津 中々

 読みたくもない本を買った。

 カッコつけて買った小説がまた積みあがっていく。読まれない本にどのような価値があるのか不明。インテリア代わりに飾って「キャー知的」みたいな反応が返ってくるでもなし、ひたすら増えていく未読のページに比例して、煩わしさと自己嫌悪が膨張していく。

 そもそもの問題として読書がカッコいいなどという認識はどこでついたのか。思い出そうとしても心当たりがまったくなく、追憶虚しく女にモテるためにやってきた恥部が浮き上がるばかり。止めよう。堪えられない。死んでしまう。



 試しに読んでみようと一冊手に取ってページを捲る。

 途端に疲労感。活字が束になって襲い掛かり俺の目、首、肩へダメージ。溜息と共に閉じて積む。埃が舞咳き込む。


 

 人類がどうしてこんなものに価値を得ているのか謎でしょうがない。

 外へ出て遊んでいた方が余程健全だというのに、どうしてわざわざ神経に傷を負ってまで文字を追うなどという愚かな行いをするのか。海なり山なりへ出かけて、広大な自然を眺め「わぁ綺麗」とインスタントな感動に興奮していた方が余程建設的である。読書によって何を得る。本当に読みたくて読んでいるのかその本。なんとなくカッコいいからとか、頭よさそうに見えるからとか、そんな理由で読書しているんじゃないのか? 



 

 処分。

 そう、処分だ。処分してしまうおう。売れば幾らかの金にはなる。その金で服を買って外に出て、それで女と遊ぶのだ。それがいい。しかし、この量をまとめるとなると……



 ソファに腰かけ、スマフォを眺める。いつもと同じ、変わらない怠惰。

 モテる気配は、一向になし。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

積読 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る