評者も既に四十代半ばを過ぎていますが、大学のSF研のOB会で創設メンバである長老が言いました。「若いヤツに言うんだ。俺らの二十一世紀は良かったぞ、と」
いや、まだ夢見ていただけの人が現実の二十一世紀で社会問題も二十一世紀型自然災害も背負っている人をおちょくったら駄目でしょ。と言いたいところですが、これには納得せざるを得ません。昔夢見た二十一世紀は楽しかった。現実は何を間違えたのか……
それが! 小説の中ではありますが、昔の二十一世紀が帰ってきました!
うれしい? いや、ドタバタに決まってるでしょ。何もかもがズレてるのですから(溜息)。
本作は、昔の未来と今の現実の違いに着目した一品です。互いのズレを笑いに変えるべく、登場人物も(フィクションとして良い意味で)頭のネジが抜けています。そこを唯一の常識人として冷静に後片付けにあたる主人公の苦労と言ったら……
悲劇と喜劇は紙一重。というか、他人の悲劇は観客にとって喜劇。肩の荷を下ろして大いに笑いましょう。