第2話遭遇
後ろを振り向いたその直後、見たこともない化け物が俺に襲いかかった。外見はオオカミによく似ており、体長3メートル以上は確実にある。俺は化け物から必死に逃げた。目の前に無人の建物があったので、構わずドアを突き破って中に入った。
化け物は一時後退してどこかへ消えた。俺はまた襲われないように、どこか身を隠せる場所を探しに回った。建物の中を探し回るものの、とにかく人がいなくて気持ち悪い。俺が入った建物は、どうやら風俗の施設らしく、やたらいかがわしいグッズが乱雑に置かれていた。こういう危機的状況で風俗嬢が抜いてくれたらどんなにいいことか。俺はどんな世界に飛ばされたのか考えると同時に、嫌な上司とクレーマー気質の客の対応しなくて良いと思うと、少しは安堵した。
そうこうしている内に、隠れるには丁度いい部屋を見つけた。頑丈な扉で覆われており、部屋の中には横になれるスペースもあり、シャワールームも完備していた。これでしばらくは身を隠せる。ただ問題はどこで食料を調達するかだ。また外に出ては得体の知れない化け物に襲われて殺されるかもしれない。せめて武器があれば良いのだが。とは言え外が暗くなる前に、食料を調達しないと何日持つか分からない。
俺は化け物に襲われる覚悟で、また外に出ることにした。周囲を警戒しつつ、食料がありそうな建物を探した。隠れ家として使っている風俗施設からそう遠くない場所で見つかるのが理想的だ。周りは会社のビルディングばかりで、食糧を完備してそうな施設はなさそうである。とはいえこれ以上先へ進むと道に迷いそうだ。
ドシンという巨大な足音が大地を響き渡らせた。まさかとは思ったが、例の化け物が俺の5メートル離れたところにいた。俺は流石に死ぬ予感しかしなかった。もう俺のことを好きに喰ってくれと半ばヤケクソになったその時、銃声が鳴り響いた。何事かと思ったが、化け物は頭部を撃たれ即死だった。ビルの建物から1人の少女が姿を現した。背丈はざっと150cmで赤毛でかつ青色の瞳をしている。
「君なのか、化け物を撃ち殺したのは?」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
「どうかしたじゃないよ。君のような華奢な少女がどうやってあんな化け物殺せたんだよ。」
「失礼な男ね。私のような少女でもあれぐらいの化け物は余裕で倒せるもん。」
「すまん、謝るよ。君、名前はなんだい?」
「私はナオミ。あんたは?」
「俺は神事。どこにでもいるごく普通のサラリーマンだ。よろしくな。」
「へー神事ね、サラリーマンなんか社会に飼い慣らされている犬って感じがしてつまらないわね。」
なんとも嫌味で上から目線のムカつく少女だが、この恐ろしくも未知な世界を生き延びるには、ナオミに頼る他ないのだ。仕方がない、しばらくは様子を見てこいつと行動を共にするか。
水溜りの向こう @Numabon315
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