噂話/切り裂きジャックを追え!その1

「切り裂きジャックの噂か……」


 僕はそんな詳しいわけではないのだけども、このロンドンには昔切り裂きジャックという存在がいた。ホームズが相変わらずの外交力でどっからか聞いてきたらしい。


「それはどういった者で?」


「まぁ、あれだ。正体不明の殺人鬼とでも思えば良い」


 実際のところ、昔に現れては結局の所正体を掴めず、時折にこれが正解ではと出てくるが結局は掴めず仕舞。そんな話に意味があるかと言うとうーん……否定はするのは良くないがなんとも。


「あっ、今回は昔あった切り裂きジャックの正体というより、再来の話ね」


「ホームズ、多分それって電脳使っているから痕跡残らない人の話なのでは」


 ホームズの顔がドヤ顔じみていてたところから急に転落していく。


「……やめてくだしゃい。その可能性はあまりにも夢がないです……」


「ホームズの夢があっさり潰れていったな。まぁ、電脳技術は俺たちに関してはハーンがいるからそれなりに理解できているが一般からすればエーテルの痕跡が残らない切り裂きジャック同然の存在というのは納得できるな」


 ホームズの元に行き、慰める。いやぁ、ハーンって手加減なく知識を総動員するからホームズも大変だなぁ……


「でもホームズ。私は今回のことは全然詳しくないです。調べてきた知識を聞きたいのです」


「待ってましたぁ!」


 慰めて撫でていたところに急に立ち上がり、ハーンの元へと飛びついていく。倒れて尻もちをつく。


「いきなり飛び上がるからびっくりするよ!」


「あっ、ごめん。それでもって話しますと、今回の切り裂きジャックの再来というのは町中ですぐにやってきて襲いかかるというのがあるらしい」


「それだと、被害は結構ありそうなものだがな」


 だけども、そんなにも被害があれば聞いたことがありそうなことを踏まえると。


「いや、それが多少の軽症ぐらいならばあるだけども、大怪我とかの大事に至ったってことがないだよね」


「正直、それはいわゆる切り裂きジャックと呼ばれる存在は電脳を上手く扱えていないのでは……?」


「あれか?前に言っていた似非だったり云々のやつか?」


 前にハーンが『控えめに言って似非、たわけ者を通り越して邪悪です。これが無知であろうと既知であろうと』って言っていたからな。結構語尾強く言っていたのを覚えている。


「これは……私の憶測がまだ多いのでしっかり裏をとって話そうと思いますが、ロンドンの電脳事情は胡散臭いですよね……」


 暗い顔をするハーンに対してホームズは笑顔で微笑みかける。


「ハーンのことを考えると、調べたほうが良い感じかな?」


 ハーンはうなずく。


「じゃあ、聞き込みってところから行くか?」


「あっ、申し訳ないだけども私とアーサーはちょっとやりたいことがあるのでちょっと寄ってからで良いですか?」

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魔術都市ロンドン備忘録 りん @keizoku

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