茶会
紅茶のわからないものからすれば茶葉に対して大した違いは感じられないのかもしれない。
だが、アールグレイという茶葉は本来柑橘の香りを楽しむものでありストレートで飲むことが勧められている。
もちろん紅茶というのはそれぞれの趣旨趣向に沿って好みに合わせるものであるのは大前提だ。
もちろんそれを踏まえたうえでボクは、目の前にいる黒髪の少女へ問いかける。
「……妹ちゃん。君の紅茶はどちらかというと紅茶風味のミルクだね。」
「そうでしょうか!?ふわふわのミルクが大好きなんです~っ!」
少女はそういうと両手を頬に当て、ニコニコと笑った。
本人が幸せそうなら構わない。
……というにはほんの少しボクの心の余裕が無いのかもしれない。
ボクは紅茶のポットをゆっくりと回すと自分のカップへそそぐ。
アールグレイ独特の甘酸っぱい香り、茶葉の舞う姿が艶美だ。
先日、休日に学園の外、長い坂を下った先にある安くはない専門店で買ってきた自慢の茶葉だ。
人並み以上にこだわりがあるには自信がある。
そうでなければ自ら『紅茶部』なんて名乗ってこんな集まりを作ったりはしない。
「うんっ、やっぱり会長さんの淹れてくださる紅茶が一番美味しいですわ!」
「…紅茶の味するのかい?」
「えぇ、もちろん。それにこのクッキーも絶品です~つ!毎週金曜日の放課後が本当に楽しみなんです。お誘い頂けて光栄ですわっ。」
ニコニコ髪を揺らしてはオーバーリアクションで手を上げて喜ぶ。
前言撤回。
彼女がそれほどまで喜んでくれるのならば、それで十分かもしれない。
ボクはカップを傾け一口紅茶を口へ含む。
ほんのり甘く、果実の香りがする。
…本当はストレートで飲んで欲しかったんだけどな。
目の前で嬉しそうにクッキーを頬張り、反対の手にはカップを持つ少女。
紅茶部に求めていた"気品"はない。
「ソル、零すよ。」
「お兄様!いらっしゃったのですね!」
低い声と同時に現れたのは"ソル"と呼ばれた少女の兄だった。
彼はボクに小さく会釈するとソルの隣へ座った。
それから中央に置いてあったカップを一つ手に取ると、ボクをじっと見つめた。
「やぁ。今日も研究終わりかい?」
「あぁ。本を読むのは楽しいが難しい。」
「確かにそうだね。今度会長室に来たらいい、きっとキミの興味のある本もあるよ!」
「…!ありがとう。」
彼のカップへ紅茶を注ぎながら雑談をすると、ソルはむっとした顔でボクらを見た。
難しい話は嫌いらしい。
妹のソルはどちらかというと直感タイプで、兄の"ルナ"は論理的なタイプだ。
性格が真反対でもこうして仲良くいられるのは二人が双子であり生まれてからずっと一緒にいることが大きいのだろう。
特にルナは面倒見が良いのもあり少し我儘であるソルとは相性がいいのかもしれない。
「さて、メンバーはそろったことだし。改めて今日のお茶会を始めようか。」
「はいっ!」
「あぁ。」
双子が笑う。
3人でカップをほんの少しだけ傾けて目を合わせる。
「スカゥイ!」
掛け声と同時にそれぞれのカップに朱色の花弁が浮かぶ。
妹は声を上げて喜び、兄はそれを見て笑うのだ。
ソル
フィオーレ高等学園の1年生
ルナの双子の妹
魔法 能力向上 光
髪 黒
瞳 左は金 右は蒼
ルナ
フィオーレ高等学園の1年生
ソルの双子の兄
魔法 毒牙 闇
髪 黒
瞳 左は金 右は蒼
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