第3話 武具探し
武具を探しに行くことになったが、何故か馬車に乗ろうとしたら王女が既に乗っていた。
「何故、馬が乗ろうとしているのかしら?ここは人が乗るところであって、馬はこれを引く為にいるのですよ?」
王女がここにいる理由を聞こうとしたら、先にそんなことを言われる。
犬ではなく今度は馬らしい。
俺は一度馬車の扉を閉めて騎士団長に詰め寄る
「おい、なんであいつが乗ってるんだ?」
「王女様は巫女になります。ナオト様と同じく魔王と戦うパーティの1人です。武具探しには王女様が使用する巫女用の武具も含まれます」
……マジかよ。
巫女ってあんなのが巫女なのかよ。
「本気で言っているのか?あいつに背中を任せることなんて無理だぞ?」
「本当です。それに王女様はあなた達よりレベルも高いですよ」
「ちなみにいくつなんだ?」
「100は超えているはずです」
「……それは高いのか?騎士団長よりも強かったりするのか?」
「王族としてはあり得ない程に高いです。私のレベルは200を超えたあたりですが、王女様は巫女ですので戦ったら私は負けるかも知れません。1レベルに対しての重みが違うのです」
「そうか……。それで俺は馬だから馬車には乗らず、それどころか馬車を引けと言われたんだがどうしたらいいんだ?」
「……私が王女様と話をしてきます」
騎士団長は馬車に乗り込みしばらくして出て来た。
「もう一台馬車を用意しますのでそちらを使って下さい」
王女は俺達と一緒に乗る事を認めなかったようだ。
一緒に戦うのだから、これを機に関係を修復して少しでも勝率を上げようとは思わないのだろうか?
少しして持ってこられた馬車に乗り込み武具探しに出発する。
馬車は俺と笹原くんと星野さんが乗ったこの馬車と、王女が乗っている馬車、騎士団長と使用人達が乗っている馬車、食料などを乗せている馬車の4台である。
武具と惹かれ合うらしいので、俺達が乗った馬車を先頭に何も考えずに進む方向を決める。
「本当に魔王を倒したら家に帰らせてもらえるのかな?」
星野さんが言う。
「そう信じて今は頑張るしかないよ。魔王のことは王女以外も同じことを言っているし、どっちにしても倒すしかない。じゃないと、帰るどころか死んでしまう。倒した後に帰してもらえないなら、その時に帰る方法を考えよう。この首輪のこともあるし、強くなっておいて損は無いはずだ」
「……そうだね」
馬車は休憩を挟みながら進んでいく。
目的はあるのに行き先の決まっていない旅だ。
どこにモチベーションを持っていけばいいのかわからない。
一緒に旅することになっても王女は相変わらずだ。
休憩の度にわざわざ俺達の馬車に来てふざけた言動をしていく。
仲良くしようとは言わないから、放っておいてくれないだろうか……。
そして城を出発して大体1ヶ月経った頃、立ち寄った村で遺跡の話を聞く。
遺跡の奥には祭壇のような所があるだけで、何かが祀られているわけではないらしい。
俺達は遺跡へと向かい、祭壇らしき所まで進む。
遺跡の中は少し魔物が住み着いていたが、村の人でも奥まで行ける程度なので危険はほとんどなかった。
最奥までたどり着いたけど、村の人が言っていたように祭壇らしき物はあるけど、他には何もない。
そう思ったけど、星野さんが祭壇に近づいた時に眩しく光り、杖とローブが現れた。
俺がさっき近づいた時には何も起きなかったのに……。
選ばれた者の前に現れるってこういうことか。
しかしこんなペースで全員分見つかるのだろうか?
惹かれ合うといっても、ここまで城から一直線で向かっていれば5日程だったはずだ。
普通なら見つからないだろうから、惹かれあってはいるのだろうけど、武具のある所と光の線で繋がるとか、もっと見つかりやすければいいのに。
星野さんはすぐにレベル上げの為に城に戻る予定だったが、聖女の武具は回復や抵抗力を増加させるなどの守りを高める効果のある武具だった。
1人だけ戻ったところでレベル上げの効率は上がらない為、もう1つ武具が見つかるまでは一緒に行動することになった。
さらに2ヶ月程過ぎた時、笹原くんの賢者用武具も見つかった。
笹原くんも星野さんはレベルを上げる為に城に戻って行った。
「巫女の武具は見つからないなんて、私に対する嫌がらせかしら?反抗するなんて躾が足りなかった?」
王女が言うが、そんなつもりはもちろんない。
「どこにあるかも分からないんだから、嫌がらせで見つけないなんてことも出来ないだろ!いだだだだ」
反論したら痛みが走った。
「あなたの探す気が足りないと言っているのよ。それくらい分からないの?なんで勇者があなたみたいな凡人なのでしょうか?いえそれは凡人に失礼ですね。せめて召喚されたのが犬でなくて人であれば既に見つかっていたはずなのに残念でなりませんわ」
俺は怒りを堪えて耐える。
「その反抗的な目は何?躾がまだ足りないのかしら?」
「俺を痛めつけて武具が見つかるなら勝手に躾でもなんでもしてくだだだぁぁあああ」
「望みを叶えてあげたわ。これは武具を2つ見つけた褒美よ」
王女はそう言って自分の馬車に乗り込んだ。
褒美どころか罰じゃねえか!
それから1ヶ月程した時に洞窟の奥で俺の武具が見つかったが、王女の武具を見つけないといけないので解放はされず、王女の武具が見つかったのはさらに2ヶ月が経った頃だった。
城を出てから半年、予定を少し超えている。
俺の武具が見つかってからは特に王女からの当たりがキツかった。早く見つけろと。
2人に遅れて3ヶ月、やっと俺も本格的なレベル上げを始める。
魔王が封印されている地まで距離があるらしく、鍛える時間はあと100日程しか残されていない。
それでは足りないのではと思ったが、武具の力は強大でダンジョンの奥深くでも何も問題なくレベル上げは可能だった。
俺は王女と騎士団長と3人でダンジョンに潜っていたが、途中で騎士団長がついてこられなくなり、王女と2人で潜ることになった。
悪態をつきながらも、王女はレベル上げに対しては真剣だった。
やはり、魔王を倒さないと世界が滅びるというのは本当なのだろう。
ただ、もう少し時間があればもっと奥の魔物を相手にレベルを上げることが出来ただろう。
レベルを上げながらだったこともあるが、未到達エリアからは次の層への階段がどこにあるのかが分からず、探すのに時間が掛かった。
それでも俺のレベルは500を超えた。
とうの昔に騎士団長よりも強い力を手に入れており、賢者や聖女、巫女に比べても1レベル当たりの伸びがいいので、この国では1番の強者となったと思われるが、はたして魔王に勝てるのだろうか?
やれることはやったと思う。
これ以上何かやれたかと聞かれても、なかったと言える。
城での最後の1日、今までと比べ物にならないくらいの豪勢な食事が用意されていた。
最後の晩餐ということだろうか……。
十分に休息をとった後、魔王が封印されている地へと向かう。
俺の人生が後1ヶ月もしないうちに終わるのか、それとも生きながらえることが出来るのか。
そして生きながらえることが出来たとして、元の世界に帰ることが出来るのか……。
城にいた人達からずっと何か重要な事を隠されているような気がしていたが、城を出る時にそれは確信に変わった。
送り出した人達は、まるで選ばれた生贄を見るかのように哀れんだ目をしていた。
魔王を討伐出来るのかどうか心配そうに見られるならわかるのだが、哀れんだ目をしていた理由が全く分からない。
ただ、前から感じていた違和感もこんな感じだった気がする。
城にいた人達の振る舞いがその場面と少しズレているというか、演技でもしているかのように感じる時があった。
だから何か俺達に知られたらマズい何かを隠しているのではと思っていたわけだけど……。
しかし、誰もその答えを教えてはくれず、不安を残したまま馬車は進んでいく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます