第4話なんでかな...

水崎 飛鳥。


私の知っている人かどうか最初は分からなかった。

でもなんとなく名前に聞き覚えがあったからちょっと頭を回してみた。

で、ようやくなぜ私がこの名前に見覚えがあるのか思い出した。

飛鳥さんってこの前の新歓にいた一つ上の先輩だ。まさかこんなところであの人を思い出すとは思っていなかった。



「水崎 飛鳥さんですよ。あの新歓にいた一個上の先輩ですよ。」

皆んなにも説明したらなんとなく思い出してくれた。



そうだ、そういえばlineを交換したから持っているはず。

連絡してあげれば届けられるかもしれない。何せクレジットカードはかなり大事だろうし、よく使うだろうから。

私は自分のlineの履歴を探した。



「あった。やっぱ早く教えた方が良いよね。ちょっと電話してみるねー。」


隣にいたミカちゃんがそう言って飛鳥さんに電話をかけ始めた。




この時私はなぜか少しムカついた。

多分私が初めに思い出したのに、lineも持ってたのに、なんて思ってたからだろう。電話に出た飛鳥さんがミカちゃんにお礼を言いながらすぐそっち行くね何て言っていて、ミカちゃんも、いえいえそんな事ないですよ、じゃあ待ってますねなんて返していて何だかちょっと悔しかった。

こんなこと思うような自分じゃないはずだけどなぜか、どこかで私は飛鳥さんに直接関われる機会を探していたのかもしれない。




とにかく、飛鳥さんがここに来ることになったから私たちは店で来るまで待つことになった。

届けてくれた留学生の子たちは良かったです、ありがとうと言って帰っていった。


クレジットカードを落とすなんて海外でやってしまったら絶対取られて帰ってこないよなー、やっぱり日本は他と比べると平和な国なのかなーなんて皆んなで話しながら待っていると、




「ごめーん、ホントにありがとう!!まじで助かった、本当にありがとうねぇ。」



と言いながら、私たちを見つけた飛鳥さんが駆け込んできた。

ホントに元気の良い明るい人だなってまた思った。


飛鳥さんはお店の従業員の人と話しながら、これが自分のクレジットカードなことを説明してたくさんお礼を述べていた。




一件落着したところで、皆んなでお店をでて解散することにした。

道を少し行ったところで一緒に来ていたうちの2人と別れ、帰る方向が一緒だった私とミカちゃんと飛鳥さんで途中まで一緒に帰ることになった。


「ホントにありがとうねぇ。教えてくれてホント助かったわ。まさかあのお店にクレジットカード落としてるとは、連絡来るまで気がつかんかった。」


どうやら飛鳥さんは連絡がきて急いで家を出て自転車を飛ばしてきたらしい。


自転車を押しながら、なぜ落としたんだろうとかあの店で大学の友達とご飯食べてたんだよねとかを笑いながら話してくれた。



ミカちゃんは先輩と普通に話していたけどなんだか私は会話にも入れず、話したこともないから気まずくて、でも一緒に帰っていて、ただただ隣を黙って歩くことしかできなかった。


コミュ症じゃなければ普通に話したりできたかもしれないけど、それがどうしてもできない自分がときどき嫌になる。

そんなことを頭の片隅で考えつつ、私は会話に相槌を打っていた。



「じゃあ私たちはこっちの道なので。お疲れ様でした!」


「うん! ホント今日はありがとね! お疲れ、バイバイ!」


私とミカちゃんは家が近いので一緒に飛鳥さんと別れた。



結局、何にも喋れなかった。

若干落ち込みつつ、ホント飛鳥さんって明るくて元気だよな、また会えるかな、なんて考えながら家に帰った。

















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 正解なんてないのかな。素直な自分はどこだろう? 葵 夜月 @aoiyozuki96

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