第3話 学生生活の中で



大学生活も何とか当たり前の日常として定着してきて、今まで暮らしていた所から遠く離れたこの街にも少しずつ慣れてきた。

今まで全く行動力のなかった私だけど、勇気を出して少しずつ行動範囲を広げてみたり、今まで入れなかったであろうお店などに入ってみたりしている。私にとっては進歩と言える。


私は大学の医学部に進学している。周りには私より才能がありそうな人で溢れていて、今まで知り合ってきた人達とはまた違った雰囲気があって何だか少し不思議な感じだ。

それでも人間関係は今までと変わらず私には難しい。

難しいというか、勇気がない。人が私をどう思っているのか分からなくて、人の事をすぐに考えてしまう私は他人に流されがちだ。

すぐに恥ずかしいと感じてしまうし、もう、本当に、私はこんなんじゃないのに、なんていつも思ってる。



まぁ実際は、私だって友達はできたし、テストの成績も悪くない。

ただ私の理想が高いだけの気もしている。



そんなこんなで毎日悩みながら過ごしているが、楽しいことだってある。




私は小さい頃から運動が好きだったから何か大学生になってもスポーツをやりたいと思っていた。

医学部の学生の中でサッカーのチームがあるから入らないかと誘われた私は何人かの同期と一緒に医学生のサッカーチームに参加することにした。

それほどサッカーが上手いというわけではないが小さい頃からサッカーが好きで中学生の時などはサッカー部に入ろうか悩んだ時期もあった。

一年間女子サッカーチームに参加したこともあった私は大学に入ってからサッカーをできるなんて思ってなかったから結構嬉しい。


やはりサッカーのようなスポーツはチームのほとんどが男ということが多いが私の参加したチームも例外ではない。それでも同期や先輩は皆んな優しいし面白い人達ばかりで今はとても楽しい。マネージャーの女子の先輩や観戦にくる他学部の女の先輩もいて何かと気遣ってくれるので普通に安心してチームに参加できている。

チームでサッカーをやっている女子は私1人だけど私の見た目が割とボーイッシュで身長も高めなところや小さい頃から男子とサッカーをしていて男子だらけでサッカーをすることに慣れているところもあり、周りの皆んなからもクールで運動神経良い子なんだねとよく思われているらしい。

先輩たちと仲良くなって何かと色々な情報をもらえたり、ご飯に誘ってもらえたりしてとても楽しいからこれからも頑張って皆んなと仲良くなっていきたいと思っている。






今日は大学の授業のない日だったので同級生何人かとご飯を食べに行くことにした。

まだあまりこの街のお店をよく知らないのでとりあえず定番の中華料理屋。

かなり色んな種類のメニューがありうちの大学の学生もかなり常連なようで、また来たいなと料理を待ちながら思っていた。

私はいくつかの料理を自分で選んでよそってもらうことにした。

他の子も私と同じにしたり、ラーメンを頼んだり、餃子を頼んだりしていた。

この店は中国人の人達がやっていてメニューの名前がよく分からなかったから料理の見た目で選んだが、甘辛チキンみたいのはかなり美味しかった。


知り合って仲良くなったばかりの皆んなだったからお互いの出身の話とか、ご当地のもの、方言やここに来てからのことなど話題は尽きなくて面白かったし、何だか日常が安定してきたなと感じて嬉しかった。



「スミマセン。Do you know her?」

そう言って突然話しかけてきたのは海外からの留学生だった。


差し出してきたものを見れば、クレジットカードを持っていた。

どうやら落とし物を拾ったようで、日本語が読めなくてどうすればいいか分からなかったから私たちに聞いてきたようだ。


このお店には私と同じ学部生がよく来ると言っていたから学生のものだったら持ち主がわかるかもと思いそのクレジットカードの裏面の名前を皆んなで覗き込んだ。


[水崎 飛鳥]


裏面にはそう書かれていた。



















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