第1章 2.勉強会…?

「あーお母さんか…って…………え?」

颯太はシュークリームを皿の上に落とした。

「うん一応お母さんだよ。血は繋がってないけど。そんなことより、このシュークリームほんとに美味しいんだけど。」

「いやいや、『そんなことより』じゃなくて!」

「えー色々説明するの面倒臭いよ。」

「そこをなんとか!」

「僕は元々養護施設にいて、中学生のときに彩さんに引き取ってもらった、って言うだけの話。」

僕は颯太の顔を見る。ぽかんとして思考が停止しているみたいな間抜けな顔をしている。かっこいい顔が一瞬で面白い顔になった感じだ。

「別に彩さんとは無理に親子らしくしている訳でもないし、だけど、僕が気を遣ったら彩さんが困るのも知ってるし。友達みたいに接してるよ。」

「親子だけどあくまで他人…みたいな?」

「そうだね。」

僕は麦茶を口に含んだ。冷たくて体全体がさっぱりする。

「じゃあ…恋愛的な関係になったりする可能性もあるってこと?」

「ゴホッゴホッ。」

お茶でむせた。

「颯太はとことん変な考え方をするね、彩さんは一般的に『綺麗』なのかもしれないけどさ、中身ガサツだし。女の人として見れないレベルだよ。」

まあ、流石に言い過ぎたかもしれないが、本当に僕は年上の女性に興味ないのだ。あ、年下に興味あるとかそういう意味ではないよ?

「ふーん、じゃあお前好きな奴いるの?」

「いやいないよ。今は勉強が彼女みたいなもんだし。」

颯太にガチ目に引かれたので、「まあ彼女ほどではない、友達レベル」と、訳のわからない説明をしておいた。

「じゃあ、あの子可愛いと思わない?A組の佐藤楓。」

「あーあの、図書委員で一緒の子か。まあ、端正な顔立ちだとは思うけど。」

「えっ、まじ?!亮もそう思う?」

シュークリームを頬張りながらコクンとうなずく。勢いでメガネが下ったので直した。

「俺あの子狙ってるんだよねー。」

「へぇ。せいぜい頑張りな。」

「えっ何その態度酷くない?友達ならもっと応援してくれても良くない?」

「別に僕に関係ないし。」

「もう!そんな奴だとは思わなかった!余ったシュークリーム食っちゃうぞ!」

「それを食べて彩さんに憎まれるのは君だよ。」

「えーやだ、彩さんに嫌われたくないー。」

「颯太は顔が綺麗な人全員狙ってるのか?」

「そんなわけ無いよ〜。今は楓ちゃん一筋だもんね!」

「ふーん。」

適当に返しながらまたシュークリームを頬張った。甘くて体がとろけそう。

「さあ!シュークリームも食べたし、勉強しますよ!」

口を尖らせている颯太の前に課題を置いた。


結局帰るのは17時過ぎになった。何故か、自転車に乗る気分ではなかった為、重い自転車を押しながら歩くことにした。

「夕方かぁ。」

夕日が出ていて、街を輝かせていた。


『いいか?夕日が出る時間まで自転車に乗る練習をしたお前は凄い!凄い奴だ!』 『へへへ。』


今でも思い出すあの記憶。

僕は、夕日が、嫌いだ。

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夕焼け、また、思い出す。 @orange00

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