造花
サトウ
造花
「花にも色々あるよね。造花とか」
「藪から棒にどうしたんだ」
「別になんてことはないんだけど、よく考えたら花にも種類が沢山あるなって思ったの」
「
「うん。そんな感じに花って言っても色々な花があるんだなって」
「言われてみれば確かにそうかもな」
「造花がね、埋めてあったの。マンションのお庭に、沢山」
「そうなんだ」
「あたしがあんまり見たことないからそう思うのかもしれないけど、珍しいなって思ってちょっと眺めてたの。その中にはさ、花が付いてない造花? 造花って言っていいのか分かんないけどそういうのも混ざって埋めてあって」
「この子はもう、一生咲けないんだなって思うとなんか変な気分になっちゃって。このモヤモヤした気持ちがどうしても晴れなかったからつい話しちゃった」
「……花奈は、造花も花だって思ったんだね」
「造花も花なんじゃないの? あたしはそう思うけど……あれ? そういう話じゃなかったっけ」
「造花は結局、造花ってことだよ。確かに花の種類ではあるかも知れないけど、本当の花みたいに成長して花を咲かせる訳じゃないんだ。花奈は造花も花だって思ったから、咲けないことをかわいそうって思ったんじゃないか」
「そうかもしれない。でも、やっぱり造花も花だと思うなぁ。造花は花を元に作ってあるんだから造花も花だと思う」
「そこなんだよな。花が元だからこそ、俺にとって造花は花じゃないんだよ。花をモチーフにしてるからこそ本物じゃないって感じちゃうんだ。俺にとって造花は造花であって、だからなおさら偽物に感じちゃうんだよな」
「
「造花の為に花が生まれた?」
「そう、それなら造花は偽物じゃないでしょ?」
「よく分からない」
「よく分かんなくていいんだよ。何でもかんでも理由付けたって面白くないもんね。何でか分からないけど造花のためにお花が生まれたの。それでいいじゃない。もしかしたら未来では花壇にでっかいディスプレイが置かれててさ、そこで本物みたいに成長して、花が咲いて枯れる様子までぜーんぶ映す様になるかもしれないじゃん。そうやってみんなにとっての花が生きた花じゃなくてディスプレイに映された花になるかもしれないし」
「本物の花は、邪魔な存在になっちまうってことかよ」
「そうじゃないよ、京也。あたしはそういうものも含めて全部花だと思うって話だよ。あたしにとっての花。京也にとっての花。色んな花が色んなところで咲くの。本物とか偽物とか、そういうのは関係ないんだよ」
「本物だったものがいつの日か偽物って言われるようになっちゃうかもしれない世界って、やっぱり、ちょっと冷たいよ」
「……何かへんに頭使って疲れちゃった。今日はもう寝るね? 京也もあんま夜ふかししない方がいいと思うよ。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
「じゃ、切るね? また明日」
「ああ、また明日」
「……なぁ、じゃあどうしてディスプレイのお前は、あの日から変わらずにいつまでも綺麗なまんまなんだよ」
「偽物も本物もない世界で、俺はどうすればいいんだよ」
「ディスプレイのお前と仲良しこよししてればいいのか? それとも、もう骨だけになっちまったお前を忘れずに生きていけばいいのかよ」
「俺、分かんねえよ……」
造花 サトウ @satou1600
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