少し嫌な喧嘩
さぁ、楽しい夫婦の時間は終わり。
昨日は俺の試合のために一時的に帰ってきた母。
次の日、朝早くに家を出ていた。
リビングのテーブルに「優さんの顔を暫く見たくないです。希空ちゃん、誠也をよろしくね。」そう書かれた紙が置かれていた。
「優さん、何したの?」
「いや...その...」
優さんは落ち込みながら話しだした。
数日前、母と優さんは夜遅くまで父さんのトロフィーを処分するかしないかだ。
優さんは父さんの高校の後輩で仲が良かったらしく、処分が困っていた。
「陽子さんは残したいんだよね。」
「...うん、あの人が残してくれた物だから。」
優さんは父さんの物が家にあると母さんがまだ恋心があるんじゃないか...
そう不安になってつい強く言ってしまったらしい。
「...捨ててくれよ。」
「嫌よ。」
「捨ててくれよ!君はまだ先輩のことが好きなのか?」
俺と希空は寝ていて気付かなかったが結構な声量で言ったらしく、母さんも怒ってしまったらしい。
「私は愛する夫をなくし、支えてくれる後輩と結婚したら本当に好きなのか怒鳴られる、確かにまだ健志さんの事が少し好きで...」
そこまで言うと優さんがまた怒鳴った。
「分かったよ、俺は2番なんだろ、いつもいつも1番は先輩だった。」
そう言い優さんは寝室に向かった。
母の気持ちも優さんの気持ちもわかる。
「優さん、母さんと同じ立場だったら大切なものを捨てれる?」
「...そうだな、陽子さんの立場だったら、俺も捨てれないな。」
優さんはすごく落ち込んでいるし怒鳴ったことに反省してるし母も許すだろう。
「母さんの居場所わかる?」
優さんに言うわけ無いし...希空になら教えているかも...
「何も言われてないからわかんないよ。」
希空にも伝えないのか...
なら多分お婆ちゃん家にいるな。
「優さん、多分実家にいると思う。」
父さんが亡くなって1年間は実家に引っ越していた。
小さい頃も喧嘩すればよく実家に行っていた。
「行くか。」
3人で車に乗り実家に向かった。
1時間で実家についた。
「俺が行くから待ってて。」
車を降り呼び鈴を鳴らした。
「婆ちゃん、誠也だよ。」
そう言うと婆ちゃんは何も言わず玄関を開けた。
「久しぶりね。」
「だね、正月ぶりかな。」
婆ちゃんは俺の後ろを見ていた。
「優君は来てないのかい?」
「車に優さんと姉さんがいるよ。」
婆ちゃんと優さんは1度会ったことがあるらしいが希空は会ったことがないみたいだ。
初の孫娘で少し機嫌がいいみたいだ。
「陽子ならご飯の準備してるわよ。」
婆ちゃんは家に入る前に車に居る2人に手招きをした。
希空は初めて会う祖母に嬉しいのか直ぐ出てきて優さんはゆっくり出てきた。
「初めまして、お婆ちゃん。」
希空が笑顔で言うと婆ちゃんは嬉し泣きをしていた。
「婆ちゃん、希空とゆっくり話なよ。」
俺と優さんはキッチンに向かった。
大嫌いなクラスメイトと家族になった。 如月レンゲ @sora2007
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