第7話

『我を呼び出したのはお主か?』

「そうですが?」

『魔王軍四天王の一角の娘、狼族ユナだ』

「俺の相棒になってくれ」

『はあ?魔獣契約で呼んだのでは無いのか?』

「俺は奴隷系の契約を結ぶのは好きではない」

『そうなのか?』

「ああ」

『しかしな。俺と相棒を組みたいなら力を証明してみろ』

「『鸞重力』」

小型の球体が大きな狼の上にいった瞬間に地面に落とされた。

「ぐあーーーーーー」

数分そのまま放置した。

「や、め、てーーー」

仕方ないから解除した。

「私よりも全然強い。あなたは一体?」

「アルトだ」

「分かりました」

契約魔法を結んだ。一番単純なやつにした。ご主人様に攻撃ができない。した場合罰が下るやつ。

「その姿でいられると困るのだが」

「済まなかった」

耳の生えた女性になった。ついでに巨乳で、白肌で、スレンダーボデイで綺麗だった。僕の理想のど真ん中だった。

「これでどうだ?」

「それなら文句はない」

アイテム袋から綺麗な布を出して加工魔法でワンピースにして渡した。服を着ていた。

「似合っているぞ」

「ありがとう」

家の中で食事を出して食べた。エルフには先に食べるように言ってあったからなかった。

こいつの寝床がないがどうするか悩んでいると、

「アルトで良かったよな?それでいいか?」

「ああ。俺もユナと呼ばせてもらう。お前の寝床をどうするか悩んでいてな」

「それなら床でいいぞ」

「それはダメだ」

「え?普通の奴隷なら当然のことと思いますが」

「お前とは奴隷契約を結んだつもりは無い。それにお前は相棒だ」

仕方ないから買いに行き、アイテム袋に収納して家まで持ち帰って使っていない部屋を掃除してそこに置いた。

「良かったのですか?」

「別に構わない」

貴族店に行ったから新品。

お風呂に入り、食事を終えて寝ようと思ったら枕を持ってユナがやってきた。

「ユナ、枕が気に入らなかったか?」

「いえ。問題ないです」

「ならなぜ来た?」

「アルトには女心が分からないのですか?」

「なんの事かな?」

「寂しです。一緒に寝たいの」

「わかったよ。ここにおいで、でも殺したりはだめだよ」

「殺したりしたら私まで死にます」

「そうか」

お布団に入るとすごく落ち着いた感じですぐに寝てしまった。

意外に疲れていたんだなと思った。朝になり、ご飯の支度はエルフがしてくれていた。

「おはようございます」

「ああ。三人分で頼む」

「え?ご主人さまが二人前食べるのですか?」

「いや、昨日から一人増えた」

「え?」

「おはよう」

「起きたかユナ」

「その方は?」

「昨日から戸籍上は一応、奴隷の狼族ユナだよ」

「どうも」

「狼族って強い人にしか従わないで有名なのに、どうして」

「それはこの人が私より強いからに決まっているでしょ?」

「え?そんなに強いのですか?」

「ああ」

「王家のところに今日も行かないといけない。どっちが来る?」

「私は疲れておりますのでお留守番しております」

「そうか。ならユナ行くか。失礼のないようにしろよ」

「はい。それに王様は元勇者だからお前なんかかんたんに殺せてしまうからな」

「はい。承知しました」

「『転移』」

「すごいですね」

「また新しいやつ買ったのか?」

「これは召喚したんだよ」

「アルト、口調」

「いいだよ。こいつとは昔からの仲だし」

「俺も構わない」

「王妃は?」

「今、ドレス選んでる」

「そうか」

「お前、少し服装にこだわれよ」

「めんどくさい。戦闘服でいいならあるぞ」

「それはやめろ。軽く払っただけで城が吹き飛ぶ装備を会談できてもらってたまるか」

「そうか?ならこれで諦めろ」

「それはそうと、その子魔族だろ?」

ユナが警戒した。

「さすが、勇者、攻撃してみろこの国ごと消し去ってやるから」

「しないよ。お前を敵に回すことがどれほど恐ろしいか一番わかっているつもりだし」

「あら何を話しているのって、どうして聖結界内に魔族が」

魔法を唱え始めたから、

「バン」

魔力弾で魔法陣を破壊した。

「え?どうして?」

「やめておけ」

「あなたでも」

「そいつは敵ではない。それに賢者と敵対するつもりか?」

「え?」

「こいつの奴隷に手を出した場合この国ごと地図から消すらしい」

「ごめんない」

「いえ」

「アルトもごめん」

「いいさ」

「というか空中に浮かんでるの?」

「寝るのにらくなんだよ」

「それは飛行魔法の無駄遣い」

「いいだろ」

「諦めろ。賢者に常識は通じない」

「それもそうね」

「ユナ、自己紹介」

「はい。魔王軍四天王の一角の狼族の妹のユナと申します」

「あの狼の妹なだけあって、威圧度も半端ないな」

「兄を知っていますの?」

「俺が倒したからな」

「何をいっている。俺だぞ」

「そこは譲れよ」

「あなた嘘はだめよ。アルトが神聖大砲で飛ばした中にいたのよ。それもそれを食らって生きていたことがすごかったわ。

その後投げナイフをなんのためらいもなく、アルトが投げで亡くなったわ」

「そうですか」

「すまんな。姉を殺された恨みだったもので。いまは恨みはないから安心しろ」

「別に恨んでいませんよ。兄は成すべきことをナシタに過ぎませんから」

「そうか?でも少し魔族って知られるのも面倒だ。姿を隠せ」

たったそれだけの詠唱で魔力隠蔽と気配隠蔽が行われた。

「すごい」

「さすが衰えてないわ」

「王様、子爵家がお見えです」

「通せ」

「はい」

「わざわざお呼びいただき誠にありがとうございます」

「遠いところわざわざ済まないな。それでは会談を開始しよう」

座ったところで疑問を子爵家が投げかけた。

「これって婚約関係の会談ですよね」

「そうだな」

「それで相手の席に女性とはなめているのか?」

「上」

「え?」

「どうも」

「わああああああ」

椅子から転げ落ちた。

「もしかして気づいていなかったのか?」

「はい。幻術魔法で惑わされているものかと思って真剣に見ても魔法の痕跡が見れないから」

「それはそうだろうな。女性だし」

「それにしても上にいるとは」

「アリアじゃないか」

抱きついてみた。

「誰ですか?」

「よくしっている人物よ」

「え?全く思いつきません」

「飛行魔法と気配遮断がヒントかしら」

「えっと」

「よっこらせ」

「その人、賢者の石像と似てる」

「流石だね。ナナちゃん」

「え?」

「でも」

「数日前に突然帰ってきたのよ。私達も驚いたわ」

「そんなことありえない」

「それを可能にするのが賢者だよ」

「でも若返ってないか?」

「本体の体はどうしても亜空間から出すことができなかった」

「それは賢者でも難しいのね」

「ああ。そこで魂だけ外に出して他の体に転生いたしました」

「そんなことをするとはね」

「王様、嘘ではないか公爵との話は」

「いや嘘じゃないぞ。というか賢者の爵位を知らないのか?」

「え?」

「一応、君より上だぞ」

「え?」

「えじゃなくて」

ナナちゃんが僕の方に来ていた。

「魔法見せて」

「そうだな」

手の上に水を出した。

「水流だよ。初級魔法だよ」

「すごい。ほかは?」

「大半が危険だからな。ここじゃあ。そうか。少し待ってろ」

頭の中で魔法式を構築した。それも特殊結界、魔法が直撃してもなんの問題もない結界。

「展開」

言葉一つでこの部屋中に先程作り出した魔法が展開した。

「行くよ」

「うん」

「雷龍」

部屋の中に電気の龍が出て飛び回った。

「何やっているんだ?」

「魔法実験」

「婚約の会談中にすることじゃないだろ」

「それもそうだな」

「それに燃えたらどうする」

「大丈夫、あたっても大丈夫の結界が展開中」

バリンーーー。

「外部からの攻撃は考えてなかったな」

「え?」

「どうも。勇者と聖女様」

「君たち邪魔」

黒い炎が飛んできた。ユナが爪で切り裂いてくれた。

「これはこれは意外にやる獣人族もいることで」

「なんのようだ。無礼者」

「私、魔王に就任いたしました。エクリエスと申します。ご挨拶に」

「はぁ。面倒なことになったな」

「キサク、済まないが会談は中止だ」

「勇者が出張ってくんな」

「なんだと」

「すいません。無視しないでもらえませんか」

「うるさい」

間違えて高出力レーザー砲を撃ってしまった。体まるごと灰になった。

「ここは俺がやる」

「いや、魔王と言ったら勇者だろ」

「いや、また俺の仕事だ」

「すいません」

「何だ、ユナ、取り込み中だ。手短に頼む」

「はい。魔王ならアルト様が放たれたレーザーによって消滅しました」

「はぁ?そんなに弱いわけ無いだろ」

見ると本当にいなかった。

「嘘」

「何してくれたんだ」

「お前が邪魔をするからしっかり消せたか確認できなかったじゃないか」

「子供にみっともない姿を見せないの」

飲み物が入っていたグラスで頭を叩かれた。

「痛いな。聖女」

「やめて。それ」

「いいじゃないか」

「それにしてもあれ何?」

「ああ。多分、亜空間にいたときに開発した高出力レーザー砲だよ」

「え?」

「色んな人の案を参考にしたからな」

「そうなんだ」

「思い出した。大公爵」

「正解。正解を出すのが遅い」

「というかこれどうするのよ」

「それなら」

アイテム袋から魔石を数個取り出して地面があるところに投げると合金ゴーレムができた。

「あそこの修復を頼む」

ああすみたいなポーズを取り、仕事を開始した。

「なんかすごいわね」

「はい。こんなところ滅多に見られませんよ」

「え?」

「当然ですよ。ゴーレムはそれなりの支配力と魔力操作術があってこそ扱える。それも普通の人間なら一体が限界なのに十五体何ってふざけてますよ。更に合金なところにも驚きですよ」

「そうか?よくあることだからな」

「そうね。昔からちょくちょく剣士が壊していたから」

「ああ」

「本当に賢者なんだな」

「今は賢者じゃないぞ」

「職業神についてに賢者を解任されたか?」

「昇格して大賢者になった上にもう一つもらった魔塔というものね」

「それって確か、魔法の全部を知り尽くしたものしかなれない職業ですよね」

「確かな」

「私の娘じゃ釣り合いませんよ。それに先客もいるみたいですし」

「何言っているんです?」

「私、アルト様の召喚獣ですよ?」

「え?」

「人間が?」

「これは仮の姿ですよ」

「そうでしたか」

「僕は別に誰でもいいが」

テクテクと女性が歩いてきた。その勢いで抱きついてきた。

「え?」

速度は後ろに逃がしたから痛くないはずだけど、これは驚いた。

「やっと会えました!!」

「え?どういうこと?」

「あなたのことは両親からよく聞かされていました」

「そうなのか?」

「割ることをするとよく聞かされていました。賢者という職業のアルト様が命をかけたおかげでこの世界は救われたと」

「そうか」

頭をなでなでした。

「婚約についてはゆっくり考えてくれ」

「そうさせてもらいます」

「今日はお開きにしようか」

「そうだな」

子爵家は帰って行った。

「それでどうして俺は帰らせてくれない?」

「お前には聞きたいことが山ほどある」

「高出力レーザーか?」

「それも含めてだ。お前から異常なほどの魔力を感じるしな」

「それは仕方ない」

「どいうことだ?」

「正直に言う。帰ってこようと思えば、すぐに帰れた。しかし、それではダメだったんだ。もっと強くならなければならないと思った。だからそこで何十年という時間を費やして修行してきた」

「これまでよりも強いってことか?」

「そうなるな」

「現役でも強かったのにそれ以上になるとはな」

「そうしないといけない理由があったんだよ」

「え?」

「帝国最凶と呼ばれている奴がいるのは知っているか?」

「知っているがそいつがどうした?」

「昔の俺では勝てなかったかもしれない」

「え?そんなことがあるのか?」

「魔法発動に時間がかかりすぎていた」

「あれでも遅いと」

「そうだ」

「相手は魔法師か?」

「いや、剣士だな」

「それでか」

「それもあるが、強くなることをやめたくないだよ」

「そうか」

そんな時、魔眼のスキルが発動した。俺が命令しなくても勝手に危機を感知 すると起動する。

「やばい」

見えた映像が黒ローブを着た人達が子爵家を拉致する映像だった。

「どうした?」

「子爵家は?」

「今、馬車に乗り込むところらしいぞ」

「それ止めろ」

「無理だよ」

「私が行きましょうか?」

「チッ、お前でも間に合わね」

「何があったか教えろよ」

「それよりも」

「せっかく治したのに壊すのも気が引ける。仕方ないか。眷属召喚。影月」

僕の影から女性がでてきた。

「何?アルトくん」

「俺の映像を見たか?」

「それは、共有されていますので」

「なら分かるな」

「はい。お任せ下さい。捉えますか?殺しますか?」

「出来れば生かせ」

「了解しました」

僕の影に消えた。俺がこの人に教えてもらった。影月様の奥義、影通りという技で一度顔を合わせたことがある相手の影に移動が出来るという技である。映像ではダメである。しっかりと顔を見ないとならない。

「あいつは?」

「亜空間に閉じ込められていた英雄の1人、影月と調べれば出てくると思うけど」

「あの方が影月なの?」

「おお、聖女、知っているのか?」

「知っているも、あの方は神聖魔法団体を作った方よ」

「へぇ、知らなかった」

「それ本気で言ってるの?」

「そうだが?何か問題か?」

「そう。というかどこで知り合ったのよ」

「先も言ったけど、亜空間で僕に魔法を教えてくれた1人だよ。とても怖いけど」

「え?そうなの?」

「ああ。鬼と言ってもいい」

「そんなに?」

「そんなにだ」

「見えないけどな」

「人はそんなものだよ」

よく分からないけど、新しいお菓子と紅茶を出されてた。影月が帰ってくるまでここでゆっくりすることにした。


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