徳梅聖流さんのASMR PART2――派生短編――

●ラジオ収録にて PART1――


 てゆうか、ほんとに私でよかったの?

 私、ただのスーパーの店員よ。

 ああ、それ。

 そのファンサイト、私、まったく関係ないのよ。


 盗撮。


 そこに投稿されてる画像、全部、盗撮だから。

 ……だから、別に芸能人でもないって。

 何度も言うけど、ただのスーパーの店員なのよ。

 ほんとにいいの?

 あまり、たいしたことできないわよ。


 お悩み相談なんてやったことないし……。


 え?

 そういうのが良いって?

 自然な感じね……。

 じゃあ、がんばろうかな。ご期待に沿えるかわからないけど……。

 これを読めばいいのね?


 んん。

 なんか緊張してきたかも。

 不思議な感覚ね。

 喉も渇く……。水は飲んじゃだめなんだっけ?


 あ、いいの?

 ……やっぱりいいや。

 うわっ。手に汗がすごい。


 え? 

 いやよ。そういうノリ。私、そういうの好きじゃないの。

 じゃあ、読むわね。

 ごめんね、私なんかで。


 んんっ。


 初めまして、僕は高校二年生の男子です。

 僕には好きな人がいます。その人は、通学の電車でみかける女の子です。

 制服からすると、たぶんK大学付属校の生徒です。

 とても可愛くて、一目惚れをしてしまいました。でも、どうやって声をかけたらいいかわかりません。

 一回だけ、すぐ近くになったことがあります。

 ラッシュで揉みくちゃにされながら、彼女と背中が密着しました。

 めちゃくちゃドキドキしました。

 でも、やっぱり声をかけられませんでした。

 彼女を前にすると息ができません。

 勇気をもてません。

 どうしたらいいのでしょうか。

 教えてください。


 ……ふう。

 ……なるほどね。

 こういうのがくるわけね。

 なんだか面白いわね。人の悩みって。その人の私生活を垣間見ているような感覚で、ぞくぞくする感じ。


 私?


 いや、まあ、そんな、ないわよ。

 あなたが勝手にそう思ってるだけでしょ。


 ――って。

 私は関係ないじゃない。

 この子でしょ。解決しなきゃならないのは。


 もういいの?

 答えちゃって。

 じゃあ、いくね。


 まあ、あれね。

 あれよ。

 うん。


 さっさと声かけなさい。

 それでダメなら次いきなさい。

 勇気なんて、ただの言葉よ。

 言葉にだせば消えるから。


 わかった?


 ……こんなんでいい?

 ……最高?

 これが?


 え?


 そういうのが好きな人がいる?

 なに、そういうのって。よくわからないんだけど。

 次回も来て欲しいの?

 ほんとに?



************************


●ラジオ収録にて PART2――


 こんにちは。

 徳梅です。

 ――って。

 また呼ばれるなんて思わなかった。

 あんなのが反響あったの?


 まあ……。


 あんなのって言ったら、お便りくれた男の子に失礼だけどね。

 私なんかより、もっと人気の女優とかお笑い芸人よんだほうがいいんじゃない?

そっちのほうが盛り上がると思うわよ。


 え?


 素人ぽさね……。

 まあ、いっても素人だしね。

 ところで、この前の男の子は気になる相手に声かけたのかしら。

 なんか妙に気になっちゃうわね。

 こういうのって追跡はしないの?

 ……まあ、そうか。

 キリがないもんね。


 ほんとに?


 満足してるのかな……、あんなので。なんか失敗したら責任感じちゃうわね。

 でも、うじうじしてたら何も始まらないし、さっさと声をかけた方がいいわよ。


 じゃあ……。

 お便り読もうかな。

 えっと……。

 あ、これなんかいいんじゃない? この女の子。字も綺麗だし、なんとなく相談にのってあげられるかも。


 ん?


 なんでだめなの?

 ああ、お便りってあなたが選ぶのね。

 なんだ。色々と台本があるわけね。


 ごめんね。

 よくわからないのよ。ただのスーパーの店員だし。

 じゃあ……どれにする?

 この中からね……。


 ――って、これって全部、男の子のじゃない。女の子のはないの? 私、そっちのほうがやり易いんだけど。


 数が少ない?

 ほんとに~?

 さっきあったわよ。

 それに、どっちかと言えば、男の子の相談はあなたみたいに男の方がいいんじゃない? 同性の気持ちは同性の方がわかると思うし。


 あるでしょ? 

 その、なんだ。

 思春期の……。

 あるよね、そういうの。


 え?


 いいよ、私のは。

 まあ、人並みにあったけど、別に――


 ――って、私のはいいじゃない。


 早くやりましょう。

 じゃあ、この男の子にしようかな……。

 ん?

 どういうこと?


 怒られたい?


 ごめん、よくわからないんだけど。

 これって相談コーナーじゃないの?

 んん? ますますわからないわね。

 ここにお便りくれる子たちって、私たち、大人のアドバイスが欲しいんだよね。


 ……うん。


 女の子はそうだけど、男の子は……。

 なに? そんな変なやつのお便りなわけ、これ。

 てゆうか、そんな趣味の男の子なんているわけないじゃない。 


 だから、私を呼んだ?


 は? 


 あなたたち、一体、私をどういう目で見てるの?


 スポンサーの意向?


 どこの会社よ。私、何の接点もないわよ。


 ローソク……。


 ごめん。

 これ、何の収録なわけ?



************************


●バックヤードにて PART1――


 痛い?

 そっか。

 ここが痛いんだ。

 ふーん。なるほどね。いいこと聞いちゃった。

 じゃあ、これは。

 だよね。

 あそこが痛かったら、当然こっちも痛いよね。

 止めてほしかったら白状しなさい。


 ん?


 何って、これに決まってるじゃない。

 これ、誰の趣味よ。

 てゆうか、誰の差し金かしら。

 いくらなんでも調子にのりすぎじゃない?

 こんなの私が着ると思う?


 え?

 この前はノリノリだったって?


 ふふっ――

 痛いよね。ここ。

 それとこれとはちがうでしょ。

 あの時は、まあ、なんだ……。

 結構、お客さんから好評だったし、私も楽しかったし、かわいい洋服だったし。

 またやってもいいかなって思ったけど、これはコスプレとはちがうんじゃない?


 え?


 これもコスプレだって?

 なに、コスプレってこんなに過激なわけ?

 そういえば、この前のもかなり短いスカートだったけど、今回はそういう問題じゃないぐらいに攻めてるじゃない。


 見なさいよ。

 背中なんてほぼ見えてるし、そのまま下も……。

 ちょっと、言わせないでよ。

 背中から下にかけてよ。


 なんなのこれ。

 こんないやらしいのがあるなんて、知らなかったわよ。

 これ作ったやつは、きっともてないわ。

 わかるのよ、センスってやつが。


 てゆうか、これって、一体なんのコスプレなわけ?

 ……え?


 どう……。


 その……、そいつを殺すセーターっていうの、これ?

 これって、そんな名前なの?


 はっ。

 ばかばかしい。

 要はアニメのキャラじゃないのね。

 やっぱりだましたのね。私が何にも知らないからって、調子にのって。

 なんなの、このデザイン。


 100%、ばかな男の願望丸出しじゃない。


 だいたい、こんなセーター着て、めんつゆなんて売れるわけないでしょ。

 どんな関連性があるわけよ。


 この、どう……。


 ……まあ、いいわ。


 ん?


 ……どんな関連性よ。

 聞こうじゃないの。


 ふんふん。

 あのね。

 クロスMDって、そういうのじゃないの。

 見た目が涼しげだから、夏にぴったりだって。


 いやいや。

 きっと、めんつゆに関連付けてお客さんも集まるって?

 そんなバカな話ないでしょ。

 悪いけど、そんな力説されても、やらないわよ。

 しかも、力説すればすれほど、あなたの株が下がってるからね。


 見なさい、私の目を。

 これは問答無用で却下。


 わかった?


 そうそう、わかればよろしい。

 まあ、なんだ。

 もっと、かわいいやつを持ってきなさいよ。

 そっちなら考えるから。



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●バックヤードにて PART2――


 ねえ。

 これって、ほんとに合ってるの?

 私、だまされてないよね。

 なんでって……。

 だって……。

 ほら、コレ。


 ちょっときわど過ぎるんじゃ……ない?


 既に見えたりしてないよね。

 もう着ちゃったから、後の祭りなんだけど。


 いや、やっぱりおかしいわ。

 あのアニメにこんなキャラいなかった。


 いた?


 嘘ね。


 あなたは嘘を吐いてるわ。

 わかるのよ、目で。

 泳いでるわ。悲しいぐらいはっきりと。

 正直に言いなさい。あなた、私をだましたわね。

 痛いことはしないって約束するわ。

 どう? これで白状し易くなったでしょ。


 ほんとに?


 まあ……、確かにコスプレ衣装なんて、市販の服だから再現度が低いと思うけど、ちょっと大胆すぎるわよ。

 てゆうか、私、あのアニメちらっと見ただけで、詳しくないのよ。今、大人気ってことは知ってるんだけど。


 そう?


 言われてみたら、黒のニーハイだし、黒いドレスだし、黒いヒールだし、武器も持ってるし……。

 まあ、そうなんだけど。

 でも……。

 でもさ、あのキャラクターって背中がこんなに丸見えだったかな……?

 正面は確かにそれっぽいんだけど、なんか引っかかる……。

 なんか、前にこんなやりとりを……。


 ……だって、しょうがないじゃない。


 人気アニメとカレーがコラボするんだから、それに合わせてエンドでイベントやろうってなったし。以前やったときは大好評で、あっという間に梅ラーメン売り切ったし。


 ……ちょっと、面白かったし。

 でもね、なかには変態がいるから要注意だけどね。

 てゆうか、あなたが発案でしょ?

 あ、あれ……。


 んん?

 なんか、ちくちくして痛いと思ったら、まだタグが外れてなかったのね。


 ハサミ持ってる?

 うん、ありがとう。


 え……。


 ええええっ!?


 なに、これ……。

 このタグに書いてるの商品名だよね。

 ちょっと、これ見なさい。

 あなたが読みなさい。

 そうよ。


 これって、どう……。


 んんっ。


 あの、あれを殺すセーターのブラックバージョンじゃない。

 やっぱりあなた、私を騙したのね。アニメのキャラなんて、でたらめじゃない。


 はあ?

 誤解だって?

 どんな誤解よ。

 言いなさい。

 最後に言い訳だけは聞いてあげるわ。

 私、優しいから。


 ……ふっ。


 殺し屋と、どう……、あいつを殺すをかけたあ?

 どう考えても苦しいよね。


 ふふっ――

 これ、痛いよね。

 あなたが弱いところ、ちゃんと覚えてるんだから。


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エンドの恋【本編完結済み】 小林勤務 @kobayashikinmu

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