謎のURL

 この前、ネカフェに行った時の話だ。

 ブースに入って画面をつけたら、パソコンのブラウザが立ち上がりっぱなしだった。普通は清掃と一緒に再起動するんだけどな。多分、画面が消えてたから店員が忘れたんだと思う。

 ただ問題はそのブラウザに表示されてたサイトでな。いや、普通にツイッターだったんだけど、薄暗い部屋で床に血だらけで倒れている男の写真があったんだよ。

 一緒にこう書いてあった。


『A guy in Michigan, aged around 30, Killed by my chainsaw today』


 間違いない。人殺しが自分の犯罪を自慢するアカウントだ。普通なら通報モノだけど、こいつは鍵垢にしてる上にフォロワーもほとんどいないから気付かれてなかったみたいだ。

 俺はそのアカウントを通報するとそのままログアウトして、時間まで休んだ。


 少しして、俺はまたネカフェに行った。

 ブースに入って画面をつけたら、パソコンのブラウザがまた立ち上がりっぱなしだった。しかも、またツイッターであのアカウントを開いてた。

 現れたのは同じく薄暗い部屋の画像だった。

 しかし、今回は床に倒れているのが、丸裸で仰向けになっている女性だ。左胸にチェーンソーが刺さっている。 口、鼻、耳から血が流れている。

 一緒にこう書いてあった。


『A bitch in Michigan, aged around 30, Killed by my chainsaw today』


 前と同じアカウントだった。ツイッター社仕事しろよ。

 もう一度通報すると、今度は警察に行って相談してみた。

 一応調査してみるって話だったけど、海外のアカウントだってこと、それに写真が本物かわからないってことで、あまり期待はしないでくれと言われた。


 それから数日後。

 俺は山で仕事をしていた。ちょっと休憩しようと思って、タバコに火をつけてツイッター開いたんだ。そしたら、フォローが来てた。

 名前が英語で、スパム垢かと思って確認してみたら、プロフィール欄に俺の住所とツイッターIDが書かれていた。

 固定されたプロフィールのメッセージがこうだった。


『You are the next star on my Web.』


 後ろからチェーンソーの唸り声が鳴り響いた。

 俺はチェーンソーを手にとって、前に飛び出した。頭の後ろを、チェーンソーの刃が通り過ぎていった。

 振り返って後ろを見ると、茶髪の外国人がチェーンソーを構えていた。俺よりでかくて毛深い男だ。髪も髭ももじゃもじゃ、腕毛も生えてて、オーバーオールを着ていた。

 俺はすぐにチェーンソーのスターターを引いたよ。そしたら相手も気付いたのか、チェーンソーを下段に構えて慎重に間合いを詰めてきた。

 あの構えは素人じゃない。プロのチェーンソー使いだったね。


 今度は俺から仕掛けた。手首を狙った突きは避けられた。下からチェーンソーの刃が跳ね上がってきたから、俺は横に避けて、足首にチェーンソーを振り下ろした。だけど、ジャンプで避けられた。

 相手はジャンプの勢いでチェーンソーを振り下ろしてきたから、俺は更に横に避けた。受けたら危ないって思ったんだ。案の定、振り下ろされたチェーンソーは地面の土を吹き飛ばした。受けてたら押し切られただろうな。やっぱアメリカはパワーが違うよ。

 チェーンソーが持ち上がる前に、俺は腰目掛けて刃を振り下ろした。完璧に入ったけど、俺は焦ってた。オーバーオールが防刃繊維だったんだ。繊維を巻き込んでチェーンソーが止まっちまった。

 ただ、こっちも手応えはあった。切り裂けなかったけど、ブン回したチェーンソーが腰の骨を砕いた感触があった。相手は顔をしかめて、俺から距離をとった。

 俺のチェーンソーは止まってる。だけど相手も素早く動けない。睨み合いになった。

 しばらくすると、相手が徐々に下がり始めた。俺は追いかけられなかった。相手のチェーンソーはまだ動いてたからな。森の中に入って見えなくなると、俺は急いで刃をとっかえた。

 それでチェーンソーが直ったら、アイツを追いかけて森に飛び込んだんだけど、結局見つからなかった。


 次の日、例のツイッターアカウントを確認してみると、俺の投稿者の全力バトルが動画で投稿されてた。

 そこにはこう書いてあった。


『That was good chainsaw battle.』

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