あなたキュルキュルキュルでしょ?

 もしもし?

 おう、俺だ。悪いな夜中に。

 何、びっくりした? またかかってきたのかと思ったって? ……その電話の話だ。


 まず確認させてくれ。あれは要するに呪いの電話ってヤツだな?

 お前の所に電話がかかってきて、内容はこうだった。


「あなたキュルキュルキュルでしょ?」


 声が早回しになってて、何を言っているかわからなかったけど、お前には心当たりがあった。ネットの怪談だ。

 どっかの誰かのところに同じような電話が掛かってきて、切ったらそいつが死んだ。友人2人が立て続けに電話のせいで死んだ男は、ビビッて電話を切らないでいた。

 それで朝になったら声が普通の早さになって、こう言っているのがわかった。


「あなた死にたいんでしょ?」


 男が死にたくないって答えたら電話が切れて、なんとか助かった。そういう話だったよな?

 違う? 声はだんだん遅くなっていって、朝になってようやく聞き取れるようになった? ……いや、そういう細かい所はいいんじゃねえのか?

 ともかくお前はこの怪談を知ってたから、同じように対処して、朝になったら死にたくないって返事をして助かった。この前聞いた話はそれでいいな?


 あの電話、俺の所にも掛かってきたぞ。

 ああ。ついさっきの話だ。スマホに電話が掛かってきたから、出てみたらこう言われたんだ。


「あなたヴォンヴォンヴォンヴォンでしょ?」


 ……いや、ヴォンヴォンヴォンヴォンってのはエンジン音で、そう言ってたわけじゃないんだ。

 なんて言っているかわからないから聞き直したんだ。


「あなたヴォンヴォンヴォンヴォンでしょ?」


 やっぱりエンジン音で肝心なところが聞こえない。


「すいません、後ろがうるさいんですけど」


 そう言ったら、向こうに変化があった。


「あなたドルンいカスンプルル……あれっ、あなたドルン、カスン……あれっ?」


 上手くエンジンが掛からない時の音がしてさ。それからしばらく困ってるみたいだった。

 チェーンソーのエンジンみたいだったな。あれも手入れが悪かったりすると、中々エンジンが掛からなくなるんだ。

 で、最後は普通に聞いてきた。


「……あなた死にたいんでしょ?」

「いや……別に……」


 ガッカリした溜息をされて、そのまま電話が切れたよ。それで初めて、お前がこの前話してた呪いの電話の話だってわかったんだ。

 微妙に違う? 早回しになってるか、音がうるさいかぐらいしか違わないだろ。それより聞いておきたいことがある。いいか、正直に答えろよ。


 この電話、話を聞いた奴の所にも掛かってくるタイプの怪談だろ。


 ……知らなかったのか。そうか。元の怪談にもそんな事は書いてなかったと。

 ならしょーがな……あぁ、実験した!? ちょっと待て、やっぱりワザと俺に聞かせたんだな!? 対処法は教えたし、実際掛かってきても怖くなかったから大丈夫じゃないんだよ、全く……!

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