8.森はあまりにも広かった

『FF外から失礼します。ドローンを使って空から調べてはいかがですか?』


 知らない人が俺達の枠に入ってきた。

 誰だ? いきなり入ってきたけど、え~っと? 異世界おじさん? ヘンな名前だな。

 異世界??


『あの、初めまして、ですよね?』

『はい、初めて書き込みましたが、マズかったでしょうか?』

『いや耕二こうじ、お前の投稿を拡散させたんだ。きっとこの人はそれを見て来てくれたんだと思う』

『拡散?』

『ああ、なにぶんサバイバルの知識はおろか、異世界の事なんて全くわからないからな、誰でもいいから知恵が欲しかったんだ』


 そういう事か。

 確かに俺達だけじゃ行き詰っちまうからな。

 それにしても、名前が異世界おじさんって……何というか、変わった人だな。


『それで異世界おじさん? ドローンで調べろと言っても、アレはオモチャですよね?』

『いえいえ、程々の価格の物ならば、結構な性能を持っていますから、周囲の探索に仕えるはずです。例えばコレとか』


 リンクが張られていて、その先を見てみると……十万円!? こんな高いドローンがあるのか!

 しかもカメラが4Kで有効範囲が十キロメートル? マジで? こんなに遠くまで行けるんだ。


『コレ凄いな。三十分以上飛べるっていうし、耕二こうじこれを使ったらどうだ?』

『うん、俺も今見てて思った。これなら探索が進みそうだ』

『お役に立てそうですか? それともう一つ、テントが破れたという事なので、コレなんかはどうでしょう』


 異世界おじさんのリンク先には、ログハウスが載っていた。

 へ? こんなのが通販で買えるの? ってか載ってるから買えるのか。

 えっと……!?


『四百万円!?』

『高いですが、これならテントよりも安全だと思いますよ』


 た、確かにそうだけど、四百万円……そういえばアメイゾンポイントはどれだけ残ってたっけ。

 あー、一千百万円分か……買えるけど、流石に抵抗があるな。


『こ、候補には入れておきます』

『そうですね、最悪倉庫という手もありますし。気が付いた事があれば、また書き込みますね』

『はい、ドローンは早速明日にでも試してみます。ありがとうございました』


 ログハウスか……確かにテントとは違って遥かに安心感がありそうだ。

 だけど、だけど高すぎる!

 そういえば倉庫って言ってたな、えーっとどれどれ?


「人が住めそうなのは二十万円程からか、う~ん、確かにこれなら何とか……テント十個分だし、壊される事を考えたら安いのか?」


 ポン

『倉庫とか物置ってのは盲点だったな。それにドローンを使うなんて思いもしなかった』

耕二こうじ君、ドローンと倉庫を買うの?』

『ドローンは買う、倉庫は……多分買う』


 何せテントだと簡単に破壊されるし、身の安全が全く確保できない。

 その点倉庫ならテントよりもはるかに頑丈だし、雨風は当たり前にしのげる。

 う~ん、異世界おじさんは何者なのか。


 翌朝、早速アメイゾンでドローンを買い、空から周囲を調べる事にした。

 

「マニュアルを読んだら凄く簡単そうだったけど、本当に大丈夫なのかな」


 コントローラーを操作すると、ドローンが少し浮いた。

 おお? 本当に簡単に動いたぞ、それじゃあ木よりも高く上げて、周囲を見回そう。

 ドローンが高くまで舞い上がり、コントローラーの画面を見ながらドローンをゆっくりと旋回させる。

 街はどこだ、最悪街は見えなくても、森から出れたらいい。


 ぐるりと一周させた。


「森しかねーじゃん! おおぉい! 見渡す限りの森ってなんなん!?」

 

 マジかよ……あ、そういえばカメラは四倍まで拡大できるんだった。

 よしもう一度倍率を上げて……無いな。


「諦めるな、諦めるな俺。倍率を上げてダメなら、移動したらいいんだ。なにせこいつは半径十キロメートルまで行けるんだからな!」


 最高速度で移動させ、ものの数分で最大距離まで行ってくれた。

 よし、周囲には森しかないな! 拡大してもっと遠くを……無い……移動だ!

 途中でバッテリーが切れそうになったから交換し、もう一度ドローンを飛ばす。


「頼む、頼むから森から出させてくれ……あ! あれは道じゃないか!?」


 映像を拡大すると、森の中にスジの様に曲がりくねった何かが見えた。

 ハッキリとは見えないけど、そのスジに沿って木が切られている様に見える。

 より、まずはあそこに行ってみよう!


 装備を整えて、小型の弓矢を持って走り出した。

 やっと、やっと人に会えるかもしれない!

 何度も転びながら、俺は息を切らしながら道を目指して走り続けた。


 何時間が過ぎただろう、森の中は思った以上に走りにくい。

 方角は間違ってないと思うけど、まさか向きが違うって事はないよな?

 不安になりながらも走り続けると、ようやく開けた場所に到着した。


「これは……道? いや道だと思うけど、単に木を伐って地面を踏み固めただけだな」


 一応は道だと思うけど、人が通ってるのか? まさか犬猫人間が通るための道って事、ないよな?


「ええい! 悩んでても仕方がない、ここから更にドローンを飛ばして道の先を調べよう」


 背負っていたドローンを下し、早速道の先へと飛ばす。

 かなり道は曲がりくねっているけど、間違いなく人の手が加えられている。

 だから人が居るはずだ、居てくれ!


 何かが画面に映った。

 これは……さく? 丸太を使った高さのある柵が見えた。

 柵……街があるのか!?

 嬉しくなって思わず腕を突き上げると、背後から肩を叩かれた。

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