第27話:もう我ここに住む……
「もう我ここに住む……」
「マジで置いてくぞお前」
店内展示品のマッサージチェアでふにゃふにゃの表情を浮かべるクーラ。
そんなに気持ちいいのだろうか、今のマッサージチェアって。
でもこれ税込みで四捨五入したら50万円するんだけど。
こんなの買うのってどんな金持ちだよ。
「よし下僕、我の為にこれを買うことを許してやろう」
「ぶっ飛ばすぞお前」
クーラの手を引っ張って立ち上がらせる。
吸血鬼のくせにマッサージチェアに籠絡されるなよ。
「ちょ、ちょっと私も座ってみようかな……」
「置いてくからな」
「あ、先輩ひどいですー!」
座りたそうにうずうずしている山田へ声をかけて別のコーナーへと向かう。
正直、あまり一箇所に留まりたくないのだ。
クーラはこの見た目なので当然目立つし、山田だってそうだ。
一緒にいる冴えないおっさん(俺)のせいで更に際立っている。
勝手にうろちょろしようとするクーラをなんとか抑え、ようやくお目当ての寝具コーナーに辿り着くことができた。
「そういえば先輩って、今どうやって寝てるんですか?」
「リビングにソファあったろ。あれで寝てる」
「……そんなのでちゃんと寝れます?」
「寝れないから布団なりベッドなりを買うんだ」
まあ、ちゃんと寝れなくても体力は全快してしまうのだが。
吸血鬼の――クーラの眷属となっているお陰で。
「ベッドなんぞ我が創り出してやっても良いのだがな」
「……は? お前そんなでかいものも作れるのか?」
「我を誰だと思っている。最強最高の吸血鬼、クーラ様だぞ?」
「…………」
いや、作れるならお前自分で寝るベッドを自分で作れよ。
服くらいなら作れるだろうとは思っていたが、まさかそんな大きなものまで作れるとは。
となるともしかしてここで買う必要はないのか?
「この際聞いておくが、どんなものなら作れるんだ? 洗濯機や冷蔵庫は作れるのか?」
「そういう複雑なのは無理だが、見た目だけ再現するのなら可能だぞ。なんだ、ようやく貴様も我の有り難みがわかったのか?」
要するに外見は似せられるが、中身は無理ということか。
布団やベッド、服くらいなら電化製品ほど複雑な作りでもない。
「へー……クーラちゃんって本当に凄いんですねえ」
「フーハハハ! 崇めて良いぞ!」
「凄い凄い」
山田がクーラの銀髪を撫でてやっている。
そしてクーラはクーラでそれで満足げだ。
本当にそれでいいのか。
お前幼女扱いされてるぞ。
「じゃあベッドや布団は後でお前に作ってもらうとして、iPadと適当なゲーム機でも買うか」
しかしなんで俺はこのちびっこ吸血鬼にここまで甲斐甲斐しく貢いでいるのだろうか。
成り行きで拾ってしまっただけなのに。
「先輩ってゲームとかやるんですか?」
「いや、全然やらないな。特に成人してからはほとんど触れてない」
「じゃあマ◯カー買いましょうよ、マリ◯ー。一緒にやりましょー」
……64とかでやったような、やらなかったような。
今でも◯リカーって人気あるのか?
くたびれたおっさん、吸血鬼の少女を拾ってしまう 子供の子 @kodomono_ne
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