4.セルジオ・ズベレフ
セルジオ・スベレフは屈み込み、その場所で死体となってしまった女達を見ていた。
美しかった面影は既になく、目の前には血と排泄物と肉塊しかない。
嫌悪を感じるが同時に愛おしく、羨ましくも思っていた。
彼女達は死んだ。
死んだ彼女達が向かう先には、甘美なものがある。
彼女達が向かったのは、こんな腐った絶望しかない世界を鏡に映した全てが逆しまになった素晴らしい世界だ。
だから、こことは違うその場所へ行く権利を手に入れた彼女達が羨ましく、嫉ましかった。
セルジオは横たわる女の身体を踏みつけた。
しかし魂の消えた身体は何の手応えもない。
今度は手にした銃で女達の身体を撃つ。肉が弾け飛び、骨が砕け、より肉塊に近づいていく姿を見ていると、心の安堵がようやく取り戻されようとしていた。
「追っていった奴ら、帰ってきませんね」
部下の一人が言った。
セルジオは顔を上げて、先程までここにいた東洋の少女を思い返した。
彼女と一緒に侵入した汚らしい売春婦は、既に足元で息絶えている。
縄張りに無断で入り込んだ鼠の制裁のつもりだったが、ただの鼠にしては毛色が変わっていた。
こちらを見据えた少女の紫色の瞳を思い出す。
生と死。
崖上の綱渡りを思わせる絶望感、それを顕したようなあの瞳、背筋を震わせる緊張感に肌が粟立ち、勃起するのが分かった。
「あの娘を捜す」
セルジオは部下に言い渡すと昂ぶりを抱えながら女達の死体が転がる建物を出た。
星もない夜空を見上げると、どこからか銃声が響いた。
口元には笑みが浮かんだ。
あの少女の美しい瞳が欲しかった。
あれを奪えば、きっと自分は死に近づくことができる。
それは自らの死を示しているのか、他人の死を欲しているのか、
既に彼は自らの中に巣くうその真理を知ることができなくなっていた。
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