第64話:元パーティーメンバーたち
(これは悲惨だな)
秘密の部屋から出ると、王都はモンスターで溢れていた。
鏡で見た通りだ。
「おい、ダグード。お前も早く住民を守るんだ」
「う、うるさい! 命令するな! ゴヨーク様、こちらへ!」
「で、ではアスカ君! 私はこれで失礼する! あ、あとはよろしく頼んだぞ!」
ダグードはゴヨークを連れて、どこかに消えてしまった。
「まったく、自分たちだけ逃げるなんて」
「最後まで最低の人たちでした」
「後で私が懲らしめておこう」
「まぁ、放っておけ」
そのとき、ドソル・ダブーが戦っているのが見えた。
「≪聖双剣≫!」
『『グギャアアア!』』
“聖なる力”を宿した双剣で、敵を倒している。
双剣は細い刀身だが、重厚なモンスターの皮膚を簡単に切り裂いている。
元の切れ味も良いだろうが、それ以上にドソルの腕もすごいのだろう。
さすがは、四聖だ。
しかし、敵も強い上に数が多い。
周りのモンスターを倒すのに、精一杯のようだ。
「キャアアア! 誰か助けてええ!」
「モ、モンスターがうようよいるよおお!」
「いてええ!」
住民たちの叫び声が聞こえる。
騎士隊も精鋭揃いだろうが、モンスターに押されていた。
俺は近くの騎士に、状況を尋ねる。
「おい、被害はどうなっている?」
「うるさい、冒険者なんかに助けられてたまるか!」
「あっちに行け!」
「さっさと逃げればいいだろ!」
だが、まともに取り合ってくれなかった。
まだ冒険者排斥運動のなごりが残っているようだ。
「ど、どうするの、アスカ?」
「なに、すぐ終わるさ」
(まずは、闇のオーラを出しているヤツらを始末しよう。≪ホーリー・レイ・シュトラール≫)
俺が呪文を念じると、手の平から光線が放たれた。
高純度の“聖なる力”だ。
闇のオーラを突き破り、モンスターを撃ち抜く。
『ガアアア!』
アンデット系でなくても、次々と焼き殺していく。
“聖なる力”を防ぐ効果があろうと、関係ない。
より強い方が勝つ、それだけだ。
騎士隊のつぶやく声が聞こえてきた。
「お、おい、あれは“聖なる力”だよな? どうして、闇のオーラを突破できるんだ……?」
「俺に聞かれてもわからねえよ……」
「あ、あいつ、すごい強くないか……? だって、あれはSランクの魔法だよな? どうして、呪文の詠唱もなしに……」
モンスターはたくさんいるので、効率的に倒したいところだ。
(次は、≪インターロック・エクスプロージョン≫)
『『ギャアアア!』』
俺は特殊な爆発魔法を念じた。
連動するようにして、モンスターが爆発していく。
危険な一面もあるが、うまく指定すれば問題ない。
どんな敵でも、決してあらがえない最強の攻撃だ。
あっという間に、ゾンビドラゴン、デュラハン、ナイトメアなど、街を襲っていたモンスターは全滅した。
だが、トロール、レイス、フェニックスの姿が見えない。
(あの3体は、どこに行った?)
「また一瞬で倒しちゃった」
「アスカさんの強さは、留まるところを知りませんね」
「さすがは、アスカだ」
騎士隊はただただ呆然としている。
「い、今の見たか……?」
「なんて強いんだ……」
「まさか、この冒険者は本当に……」
だがモンスターを倒しても、まだ親玉を倒していない。
(早くリッチーロードを見つけなければ)
「アスカ、あいつはどこにいるんだろうね」
「ヤツは今、異次元にいるはずだ」
「異次元!? そんなのどうやって見つけるの!?」
「いや、たいしたことはない。ただちょっと大げさな魔法になるだけで……」
とそこで、俺たちの目の前に黒いもやが現れた。
「こ、今後はなに!?」
「アスカさん、ただならぬ気配を感じますよ!」
「新手か」
「落ち着け、お前ら。親玉のお出ましだ」
『さすがは、アスカ・サザーランドダ。あれだけのモンスターを、瞬殺してしまうなんテ』
もやが晴れると、リッチーロードが姿を現した。
今度は鏡の世界ではない、俺たちの世界に出てきたのだ。
「アスカ、あいつ!」
「また出てきました!」
「私たちはもう、お前を逃がさないぞ!」
『フフフ、ワタシが倒されることはなイ』
仲間は全滅したのに、なぜかリッチーロードは余裕そうだ。
「お前は死ぬまで、異次元にいた方がいいんじゃないか?」
『そんな減らず口を叩いていられるのも、これまでダ』
リッチーロードの周りに、トロール、レイス、フェニックスが集まる。
どうやら、あいつらは特別なモンスターらしい。
「観念しろ。お前たちはもうおしまいだ」
『フフフ、それはどうかナ』
しかし、リッチーロードは笑っている。
「何がおかしい?」
『さあ、これを見るがいイ。お前はモンスターは倒せても、こいつらは倒せまイ』
リッチーロードが手をかざす。
すると、3体のモンスターが白い煙に包まれた。
「あいつは何をやっているの?」
「油断するな」
しかし、そこには普通なら考えられない光景があった。
「え!? ちょっと、どういうこと!?」
「な、なんですか、あれは!?」
「ま、まさか……信じられん!」
仲間たちは、とても驚いている。
だが、俺はたいして驚かなかった。
残念なことに、予想した通りだったからだ。
「こんなところで会うとは、奇遇だ」
「お久しぶりですね」
「少しは強くなったみたいじゃない」
「お前ら……」
煙の中から、ダン、カトリーナ、バルバラが現れた。
【呪い】のせいで無能と思われていた俺は、勇者パーティー追放された。~【呪い】の制約で仕方なくお前らと同じタイミングで敵を倒しては、お前らを回復させていたのだが……俺がいなくなってホントに大丈夫か!?~ 青空あかな @suosuo
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