弟と妹
しばらく歩いていると目の前に俺の身長の2倍はあるだろうでかい門が見えてきた。その奥には左右対称の庭が広がっており、さらにその奥には、俺の屋敷アサシーノ邸があった。
門のそばまでつくと俺は門を開けリリーを先に通らせる。レディーファーストというやつだ。リリーが門を通る際に「フフッ、あらご苦労様。」と淑女みたく言ってきたので思わず吹き出してしまった。
リリーが怒っていたのは、しょうがないと思う。
中の庭を通り、屋敷に入ると、横からひゅっとメイド服を着た、黒髪の人影が現れた。うちのメイド長のアムールだ。
「おかえりなさいませ、エラン様。リリアーナ様。先程の一件ありがとうございましたと騎士兵からお礼の言葉が来ております。お疲れ様でございました。すでにお茶の準備が出来ております。ごゆっくりお休みください。」
「あ、あぁ。ありがとう。騎士団にはどういたしましてと伝えておいて。あと、その出方やめてっていつも言ってるでしょ。」
「申し訳ございません。癖というのは治らないものでして。それと、リリアーナ様、そのネックレスとてもお似合いです。では私はこれで。」
そう言って、アムールは音も立てずに戻っていった。俺が生まれる前からここではたらいていてもう50は超えているというのに、顔に一切のシワが見られない。その動きも騎士に負けない素早さを誇っている。
アムールからお褒めの言葉をもらった、リリーはというと「えへへ、ネックレス褒めてもらえたー。」と喜んでいる。まったく。
「ほら、行こうか。」
「うん!」
♢
どうせならと思い、お茶会は俺の部屋ですることになった。まぁお茶会といっても、二人しかいないんだが。というわけで、今は俺は紅茶、リリーはお菓子を運んでいる。使用人たちが私たちがしますといってきたが、これくらいのことなので流石に断った。
そしてリリーと他愛のない話をしながら廊下を通っていると、道すがら真正面から勢いよくふたつの黒い影がぶつかってきた。なんとかして避けようとしたが今は紅茶を持っているので無理だ!されたてよけなかったら、そのまま、ぶつかってくる!俺は考える。考えた末に、
結論 なるようになれ!
「グハッ!」
「エ、エルー!」
あぁ、リリーの俺を呼ぶ声が聞こえる。
「リリー、俺はもうダメかもしれない。あとのことは頼んだよ。天国で会おう。・・・ガクッ」
「あぁエルなんてこと。あなたがいなくなったらもう私は生きられない。・・・お願いよ。生きて!ウワァーーン!」
とまぁ、茶番なんだが。お茶会だけに。そんな俺たち二人の世界に入っていると。先程の元凶二人が、話しかけてきた。
「もう、お兄様、リリーお姉様!私たちを無視しないで!」
「そうですよ。お姉様、エランお兄様。僕たち寂しかったんですから。」
そんなことを言うのは、アサシーノ伯爵家の令嬢であり、俺の妹。ピンク色の髪が似合う9歳のノーラ・アサシーノ。
そして、エリトハール伯爵家の嫡男であり、リリーの弟。濃い青色の髪がこれまた似合う、ノーラと同い年のアルト・エリトハールである。
ちなみに瞳の色はきょうだい揃って一緒だ。
「ごめんごめん。悪かったって、もうしないから。これから四人でお茶会しよう。」
「「やったーー!」」
「むぅー」
いやリリーなんでそんな不服そうなんだよ。
「でも、それとこれとは話が別だ。突然ぶつかってきたことちゃんと反省しなさい。俺の姿を見なさい紅茶まみれじゃないか。俺を飲むのか?」
「「うー、ごめんなさーい!」」
「リリーにもにも謝ること」
「「ごめんなさぁーい!」」
どうやらしっかり反省してくれたようだ。あとリリー期限直してくれ。ちゃんと二人は謝ったんだから。
「はぁー、少し風呂に入ってくるからアームトに頼んでもう一回お茶の準備してもらって。」
「「はい!」」
返事をすると二人はすぐにアームトのところに行った。まったく。
「リリーは俺の部屋に言っておいて、疲れてるでしょ?」
「ふむ、わかったわ。ゆっくり入ってね!」
「う、うん。」
意味深な言葉を最後にリリーは俺の部屋に向かっていった。なんだろう。
死神になったので、聖女(幼馴染)を助けます。 こあた @shouryupin
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