死神になったので、聖女(幼馴染)を助けます。
こあた
第一話・宝石
エル。何してるの?はやく帰ろ?」
「ん?あぁごめん、リリー。うん、帰ろう!」
もうすぐ15歳になろうかという二人の男女が大通りを歩いている。男の名前は エラン・アサシーノ 。黒の髪に血のような真っ赤な瞳が特徴的。この領地、アサシーノ伯爵領の領主の息子である。
一方、女の名前は リリアーナ・エリトハール 。白の長髪に黄金色に輝く瞳が特徴的。アサシーノ領の隣にあるエリトハール伯爵領の領主の娘である。
この二人の関係は幼馴染兼恋人である。元々親同士が仲が良く今もこうして愛称で呼んだり、一緒にいることが多い。
「そういえばもうすぐで神器がもらえるね!」
あぁそんな行事あったなと考えながらエランは返事をする。
「そうだな。リリーはどんな神器欲しい?」
「うーん、私はなんでもいいかな。あ、でも武器とかは嫌だな。あんまり戦いたくないし。」
リリーのもっともらしい返答に少し笑みがこぼれる。
「クスッ、リリーらしいな」
「そういうエルはどうなの?」
「俺も、そんなに強い力はいらないかな。ここでこうしているだけで十分だから」
「ふふっ、エルらしいね」
そう言ってリリーは満面の笑う。
グフゥッ!!!!!
そ、その笑顔は 反則だろ!とっさに俺はリリーから顔を背けて自分の顔がにやけてないか確認する。
うん、めちゃくちゃにやけてる。
「どうしたのエル?」
「い、いやなんでもないよ…」
「ふしぎー?」
そんなことを話していると、
「「「キャーー!」」」
叫び声が聞こえて振り返ってみるとと男が子ども一人入りそうな袋を掴んで逃げるようにこちら側に向かって来ていた。その袋の中から少しだけキラキラしたものが見えた。
「宝石強盗だー!誰かそいつを捕まえてくれー!」
「へっ、誰が捕まるかよー!おら、そこのガキ共どけー!」
ガキ共とは俺たちのことだろうか。・・・もうすぐ15歳だぞ。
「仕方ない、行ってく」
「許さない」
「・・・・・・」
「許さない、絶対に許さない。せっかくエルと久しぶりのデートをしていて、気分が良かったのに、アレのせいで気分が悪くなってしまったわ。前にあったのは二日も前だったのに。許さない。これからエルの家に行ってエルの妹ちゃんと遊ぼうと思っていたのに。許さない。それにガキって何?私たちもうすぐ15歳だよ。こんな昼間から走り回っているアレの方がガキなんじゃないの?あっ、ごめんね、エル。気分悪くなったね。大丈夫だよ。私があのゴミを片付けてくるから。許さない、許さない、許さない、許さない・・・・・・」
「・・・・・・」
俺は、何もしなかった。いや、出来なかった。リリーのその金色の瞳は焦点があってないのか今もグルグル回り続けている。正直言ってとても怖くて頼りになるが、
自分の恋人をあんな男の所に行かせるわけには行かない。
「リリー、俺は君が好きだから傷つけたくないんだ。だから少しだけここで待っていて。」
そしてリリーの顔を見てみると顔が少し朱色に染まっていて顔を手でおさえていた。
「・・・・・・す・・き・・・・⁉︎」
「ッ⁉︎」
自分の言ったことを思い出しいたたまれない気持ちになった。これ以上こうしていたら二つの意味で危ないので、俺は強盗のところに向かう。
「リリー!危険だから離れてろよ!」
「う、うん・・」
俺は強盗を前に立ちはだかる。
「おい、止まれ!おっさん」
「あ?うっせえ!ガキ!どきやがれ!」
はぁ、どうやら話が通じないみたいだ。
「なら力尽くで行かせてもらう」
そう言って俺は強盗のところに走っていき、1メートルぐらい近づいたところで一気にしゃがみ足を引っ掛ける。すると強盗が地面を滑っていったのですかさず相手の上に乗り右手で頭を押さえつけ、左手で相手の両手を組みさせる。
「ほら、おとなしくしろ。」
「ぐっ、こんなガキに!」
「相手を間違えたな。」
少ししてから鎧をつけた騎士が二人やってきて、驚かれた。
「エ、エラン様⁉︎それにリリアーナ様まで⁉︎」
「あぁ、悪いな仕事をとってしまって。それと、この男を頼めるか?これから用事があるからな。」
「は、はい!強盗逮捕にご協力頂きありがとうございました!その男は、後は全て自分たちに任せてください。」
「頼んだ。」
「エラン様ーー!」
今度はなんだと声がする方向を向いてみると、宝石屋の店主が近づいてきていた。
「なんだ、また何かあったのか?できればはやく終わらせてくれ。リリーがやばい。」
今にも起こり出しそうなリリーの様子をうかがいながら、話をする。
「あ、い、いえ。別に止めようとしたわけではなく、強盗を捕まえてくださったエラン様にこの袋の欲しい宝石をもらって欲しいのです。何かしないとバチが当たりますからね。」
「そこまでいうんだったら。・・・リリーどれがいい?」
「私が選んでいいの?・・・だったらこれかな。」
そう言ってリリーは赤く光るルビーがついたネックレスを手に取った。
「おや、お目が高いですね。ルビーには純愛の意味があり、心臓の近くにつけるといいとされています。」
「へぇー、純愛ねー。」
俺はニヤニヤしながらそのルビーのネックレスを持ち、リリーの方を見た。
「し、知らなかったもん!ただ、エルの眼にあっているなって思っただけだもん!」
「はいはい・・・ありがとう」
「・・・うん」
俺とリリーは顔を綻ばせながら返事をしていた。
「さぁ、家に帰ろうか。なんか、もう、すごく気まずい!」
「そ、そうね!今すぐ帰りましょう!ありがとうございました、店主さん」
「いえ、こちらこそありがとうございました。これからなにとぞごひいきに!」
店主がお礼を言うのを最後に俺たちは家に帰る帰路に立った。
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