特撮ヒーローの中の人、スーツアクター/アクトレス。
撮影中は顔を出さない仕事ですが、各々やむを得ない理由で、普段から顔を隠して暮らす男女がいました。
同じ作品で共演することはなく、互いの顔も知らなくとも、2人は共に仕事に誇りと情熱を持つプロフェッショナルでした。
これは、そんな2人と制作関係者らの視点を中心に、とある劇場版映画の制作・撮影の期間を切り抜き、焼付けた物語です。
映画を舵取りして世の中を動かすのは、監督や役員、スポンサー、主演の役者などであり、立場の違いこそあれ、いずれも映画に懸ける思いを持った重要人物として描かれます。
それが「仕事」だからこそ、理想と現実を秤にかけることもありますが、作中世界の大きな出来事を動かすのは間違いなく彼らでしょう。
主人公の2人はスーツアクター、言わば「画面の中心に映る裏方」。
されど、「物語の中心にいる裏方」――作品の根幹となる部分を担う主人公らの存在があればこそ、劇中の映画も、この小説も、人を打ち抜く芯を持つ。
特撮映画の話ですので、勿論それに関連する話題や劇中劇もたくさん出てきます。
良い劇場版とは、期待通りのことを隙無くやった上で、期待以上のことを重ねてくるものですね。