第2話『烏と遊ぶ子ども』

『カァー…カァー…』

心司『どずずぅうあ』

カラスと向かい合って、まるで嬉しそうに喋る心司。その姿に母の泉はとても驚いた。

『この子は…カラスと喋れるの…』それと同時に、とても寂しい気持ちにもなった。何故、カラスと話せるのに私たちとは話せないのか。この子の言っている言葉もわからない。感情でしか感じ取れないのかと、自分自身の不甲斐なさを思い知った瞬間でもあった。


その日の夜…夫の明日也にもその事を伝えた母の泉。伝え終わり話が一段落した後、明日也は重い口を開け、小声でこう言った。

明日也『お前が…悪いんだろ…』


泉『…えっ?』泉は思わず聞き返した。

明日也『お前がちゃんとしてれば…こんな…こんなことには…!』

泉『な、何よ!?どういう意味!?』


『うあああああああああああぁぁぁ!!!!!!』


明日也は叫んだ。日々のストレスの限界だったのだ。

『ふざけやがって!お前が…お前がぁあーっ…』

明日也は涙を流して蹲り、頭を抱えながら床を叩いた…


明日也『俺…もう無理だわ…あとは頼むわ…』

泉『ちょ…ちょっと…』

バタン!!明日也は自室のドアを強く閉めて翌朝になっても部屋から出てこようとはしなかった。


泉『私は…もう…どうしたらいいの…?』

泉の目からは涙が溢れ出る。


ピーンポーン…『誰かしら…はーい!今行きます』


それはその日の午前10時ちょうどのことだった。

自宅にインターホンが鳴り響き、きっと誰かが私をこの苦しみから連れ出してくれる。そんなことを少し思いながら泉は玄関のドアを開けた。

泉『…?あ、あれ…?』

開けた先は誰も居ないのだ。

『何かしら…嫌だわ…』


『わらあぁぁあ。うぇえぇあぁ。』

心司の声が聞こえた。

心司の元へ行くとそこはリビングルーム。

テレビ番組をみてるわけでもなくて、周りをキョロ、キョロと見渡しながら話し続けている。

『おぇえろおぉおあ』『でぇええおおお』

すると、心司の声を聞いた明日也が部屋から出てこう叫んだ。

明日也『うるさい!!!』

心司『うぅぇぇえええええええんんんん!!』

泣き喚く心司。母の泉が傍へ駆け寄る

泉『ちょ、ちょっと!子供なのよ?そんなに強く言わなくても…』明日也『うるせぇ!!大体おまえが強く言わないから言うことも聞けないんだろ!!出て行け!お前ら2人で早く出て行け!!!』

泉『そ、そんなの…!』


心司『うわああああああああああああぁぁぁ…』

心司が泣き続けると、ベランダから物音が聞こえてきた。

『ゴン、ゴンゴン!ゴン、ゴン…』

カーテンを開けるとそこには…『うわあああ!!!』


約30羽のカラスが小さな家のベランダに座り込んでいた。

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