アナタはなぜなくの。

第1話『命が生まれた日』

雪が舞う季節ー。この日ある赤子がこの世に生まれた。


ギャーギャー…

産まれましたよ…立派な男の子です…!

「よく頑張ったな…泉!…元気な男の子だよ…」


家族は幸せだったー。子供が生まれて、幸せな家族いて、毎日がまるで太陽の様に温かくぽかぽかした明るい未来が待っている。その希望をいつも信じていた日々…

そんな日々が続いていく、ハズだった…。


その赤ん坊が生まれてから5年。

「どうしたの…」「この子は…もしかして…」


この子は人なのに、人間なのに、人の言葉を話せない。

その子の名前は心司。人の言葉を喋ることができない。ただ相手の言葉は何となく理解出来ていた。


心司の母親の泉はいつも頭を悩ませていた。

この子は将来、この世の中を生きていけるのだろうか…毎日朝が来ては夜になるまで、我が子の事を気にかけ、心配していた。

心司の父親の明日也は働き、生活を養うので手一杯だった。


幼稚園に通わせた事もあったが、心司は人の言葉を理解出来ても伝える事が出来なかった。

文字を教えたり、何かしたいことがある時に言葉で伝えるのではなく、紙でカードを作り、それを見せたりすると良い。そう教えても理解出来る年齢でもなく難しかった。


…そう。心司は何も(人間)の言葉が話せないだけなのだ。

喋ろうとすると心司は人が理解できない言葉を発する。

「心司!いただきますって言ってごらん」

心司『ズズズズグワァア』

「じゃあ…ごちそうさまでした。言ってごらん?」

心司『ぼぼぼぼぼぼっごご』


滑舌が悪いのか、喉に支障があるのかも病院に連れて行き医師に調べて貰ったが、至って異常は無く、一般的な人と同じだと言うのだ。

では、身体障がい ではないのか。

調べて貰った結果、脳に異変があるとの事。


頭を悩ます家族。それでも心司は楽しそうに笑う。


「どうしたらいいの…?この子は他の子達と生きて行けるの?」

母親である泉はいつも頭を掻きむしり、とても苦しく病んでいた。


それでも心司は楽しそうに遊ぶ。

…でも心司の周りには他の子達は集まらない。

それでも心司は楽しそうに笑い、走り回り、遊ぶのだ。


最初は1人で遊んでいるのかと思っていた。

ところが…、


泉「心司?いつも誰と遊んでいるの?」

興味本意か冗談混じりなのか。母親の泉は心司にきいてみた。

すると、なにかを話しながら空を指さすのだった。


「え?…お空に何かあるの?」

すると空にはカラスが飛んでいた。

ガアー…ガアー…

カラスがそう鳴くと心司は楽しそうにカラスの真似をする。

心司「ガァー…ガァー!」

心司がカラスの真似をするとカラスが急降下して降りてきた。

泉「きゃああ!」急に降りてくるカラスに驚く母の泉。

するとカラスは心司の元へ近づき、まるで甘える様な仕草で頬を撫でて欲しそうに近づく。

「………???」


そう…心司はカラスと遊んでいたのだ。

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