旅の始まり

第2話 捕らわれた少女との出会い

 

「…ハァ…ハァ……」


 妹のフリルにぶっ飛ばされて、約1カ月がたった頃、レクトはおっぱいを目指して、まだ森の中をさまよっていた。


「…まだ、森を抜けれないのか……」


 レクトが守っていた神殿は「最奥の樹海」と呼ばれる広大な森の中にあり、レクトは生まれてからずっと、この森から出たことが無かった。


「…流石に何も持たずに出てきたのは失敗だったな…

 食料は適当に狩って、足りてるけど、水がな…」


 レクトは森に転がっていた石と木等を利用して、即席の槍を作って、魔物や動物を狩りながら、腹を満たしていた。


 しかし、水分は樹液やたまにある池、動物の血から取っていて、中々、ハードな旅を続けていた。


「…人に…人に会いてぇ……」


 何より、一人で1カ月もの間、ただただ森を徘徊していて、精神的にひっ迫していたのだった。




「誰か~~助けて~~~!!」




 そんな折、どこかで人の叫び声が聞こえた。


 言葉の内容はさておいて、久しぶりに聞いた人の声に嬉しくなったレクトは声のする方へとさっそうと走って行った。




 レクトが声の元へとたどり着くと、男3人に囲まれながら、木に縛り付けられている少女がいた。


「あぁ~誰だ?てめぇは?」


 男の一人が持っていた剣をレクトに突きつけて、テンプレのセリフを放った。


 レクトはそんなことよりも一カ月ぶりに人に会えたことが嬉しくて、持っていた槍を手放して、男にすごい勢いで抱き着いた。


「…やっと、会えた……」

「な、何だ?気持ちわりぃ!!

 離れろ!!」


 男がレクトをはがそうとするが、レクトの力が強くて、身動き取れないでいた。


 そして、レクトは男に小さな声で呟いた。


「…嬉しい……けど…ごめん!!」


 そう言って、レクトは男に強烈なボディーブローを放った。


「ぐぇ…」


 男は気絶して、倒れこんだ。


「な、何しやがる!!てめぇ!!」


 残りの男2人がレクトを警戒して、剣を取り出して、臨戦態勢に入った。


 しかし、レクトは目にも止らぬ速さで残りの2人も蹴ったり、殴ったりして、あっという間に気絶させたのだった。




「すまん…どうしても、水が欲しかったんだ…」


 レクトは手を合わせて、気絶させた男達から水を奪って、ゴクゴクと飲み始めた。


 木に縛られていた少女はあっけに取られて、言葉を失っていた。


「ぷはぁ!!久しぶりのちゃんとした水、うめぇ!!」


 呆然としていた少女が、水を飲みながら一息ついているレクトに話しかけた。


「ちょ、ちょっと、早くこのロープ切ってよ!」

「あぁ、悪い悪い。

 水がうますぎて。

 今、切ってやるよ。」


 そう言って、レクトは少女を縛っていたロープを切って、解放した。


 レクトが改めて少女を見ると、露出の高い服装で大きな乳房を露わにしていた。


 レクトは母親と妹以外の女性に会ったのが生まれて初めてで、尚且つ、こんなに大きなおっぱいを見たことが無かったので、興奮して鼻血が出そうになった。


 解放された少女はレクトにおっぱいをガン見されていることに気付いて、ニヤリと笑った。


「ありがとね!!助かったよ~

 早速で悪いんだけど、もうちょっと助けてくんない?」


 少女があざとく胸を寄せて、レクトに見せつけた。


 レクトはゴクリとまだ、おっぱいを見ながら、少女に聞いた。


「えっと、なんですか?」

「実はさ。もう一人仲間がいるんだけど、はぐれちゃってね。

 多分、その子もこいつらの仲間に追われてるところだろうから、一緒に助け出してくんない?」


 レクトは視線を少女のおっぱいから、顔へと移して、ニコッと笑って、言い放った。




「分かった!!任せろ!!

 その代わり、おっぱいを揉ませてくれ!!」


「はぇ?」



 少女はレクトの大胆なお願いに再び、声を失った。


 少女は直ぐに、ハッと我に帰って、う~~んと悩んだ後、ニヤリと笑ってレクトに言った。


「…しょうがないな~いいよ~

 但し、絶対、無事に助け出すこと!!いいね?」

「マジで!?やった!!

 オッケーオッケー!!

 それじゃあ、直ぐ行くぞ!!」


 レクトはこんなにも早く夢が叶うとはと大はしゃぎで槍を手に取って、いきなり、少女を抱きかかえた。


「ちょ、ちょっと!!」


 少女が止める間もなく、レクトは少女を抱きかかえながら、ダッシュで駆け出した。


 物凄いスピードで走るレクトにしがみつきながら、少女はレクトに問いただした。


「…ま、待ってって!!

 …どこ行く気なの!?」


 レクトは草の根かき分けながら、少女に答えた。


「お前の仲間って多分、魔法使いだろ?

 だから、魔力を感じる方に向かってるんだよ。」

「なんで分かったの?

 てか、そ、そんなの分かるもんなの?」

「まぁ、ずっと、魔力の塊みたいなもんの傍にいたからな。

 ある程度、分かるんだよ。」


 そう言って、レクトは感じるままに進んでいくのであった。




 ――――――――――― 一方、その頃。




「…全く、あの子は一体、どこに行ったのやら…」


 魔法使いらしい恰好をした少女が煩わしそうに森を散策していた。


「おい!!嬢ちゃん!!

 観念しな!!」


 すると、大勢の男達がその少女を取り囲んだ。


 少女は大きなため息をついた。


「あなた達が来たってことはあの子は捕まったってことですか?」

「その通りだ。

 無事、返してほしかったら、魔石を渡せ!!」


 男達の親分と見られる男が、少女の手に持っているキラリと光る石を指さした。


「嫌ですよ。

 これはあなた達みたいな人には不似合いのものです。」


 少女は無表情で当たり前のように男に答えた。


 親分は持っている剣をギリッと強く握りしめた。


「…なら、しゃあねぇな…

 お前も無事に済むと思うなよ!!!」



「ちょっと、待った~~~!!!」



 魔法使いの少女と親分の間にさっそうと現れたのはレクトだった。


「誰だ?てめぇは?」


 親分は振り上げた剣を一旦、降ろして警戒しながら、レクトに聞いた。


 レクトは抱きかかえていた少女を降ろした。


 少女はくらくらと目を回して倒れこんだ。


 そして、レクトはふぅと息を整えて、親分に言った。


「俺はレクトって名だ。

 あんたは?」


 親分はレクトの雰囲気に何かを感じて、素直に答えた。


「…俺はバリスだ。

 ここら辺ではちったぁ名の通ってる冒険者なんだがな…」

「冒険者か。なるほど。

 まぁ、多勢とは言え、ここまで来れるってだけで、大したもんだよ。

 でも、やめといた方がいいと思うぞ?」

「…何がだ?」

「この魔法使いとは戦わない方がいい。

 多分、この中で一番つえぇから。」


 魔法使いの少女はギクッとした。


 バリスはレクトの真剣な表情を見て、嘘は言っていないと判断した。


「…そうかもしれねぇな~

 ただな~こいつらは俺らが必死で取った魔石を奪いやがったんだよ!!

 それを黙って見逃すのは冒険者として、頂けねぇんだよ!!」

「へっ?」


 レクトはバリスから真実を聞かされて、魔法使いの少女の方を向いた。


 少女は相変わらず無表情でレクトに言った。


「違います。

 元々、この魔石は私のものでこの近くの遺跡に置いておいただけです。

 それを取りに来たら、この男達がそれを持って行ってたんですよ。

 それを取り返しただけです。」

「そんな理屈が通るかよ!!

 ここまで来るのにどんだけ苦労したと思ってんだよ!!

 人が苦労して手に入れた魔石を俺らが寝てる間に盗みやがって!!

 早く返せよ!!」

「嫌ですって。」


 少女とバリスが言い合いをしている中、レクトは頭を抱えていた。


 そして、しょうがないので二人に割って入った。


「まぁまぁ、二人とも待て待て!!

 …えっと、正直、個人的にはバリスが正しいとは思うが、俺はこっち側の人間なもんでな。

 落としどころってのを考えたんだが…」


 バリスはふぅふぅ言いながらも落ち着いて、レクトに聞いた。


「…落としどころってのはなんなんだ?」


 レクトはこいつ見かけの割にいい奴だなと思いながらも、夢のためにとバリスに話した。


「この魔法使いが戦うとあんたら全員が壊滅する可能性が高い。

 てか、俺もここら辺が焼け野原になるのだけは避けたい。

 そこで、あんたと俺の一騎打ちで決めないか?」

「…一騎打ちだと?」


 バリスは剣を肩にトントンとしながら、レクトに聞いた。


 レクトはニヤリと笑った。


「そう。1対1で勝負だ。

 あんたも冒険者なら分かるだろ?

 強いもんが総取りってな。

 これが今んとこ、一番平和的にこの場が収まる方法だと思うんだが、どうだ?」


 レクトの言葉を聞いて、バリスもニヤリと笑った。


「…乗ったぜ!小僧!!

 勝った方が魔石を得る!!

 他のもんも文句はねぇな!?」

「あったりまえよ!!やっちめぇ!!」

「旦那が負けるなんてこたぁねぇよ!!」


 男達が盛り上がっている中、魔法使いの少女が慌てた様子でレクトに言った。


「ちょっと、あなた!!

 何、勝手に決めてるんですか!?

 あなたが負けたら、魔石を取られるじゃないですか!!」


 レクトは少女に小さな声で呟いた。


「…俺が負けたら、あんたの魔法で逃げるくらいできるだろ?

 …まぁ、最悪、壊滅させてもいいし。」


 少女はレクトの大胆な提案に何も言えなかった。


 そして、レクトはニカッと笑ったのだった。


「まぁ、任せろって!!

 負けることはねぇから!!」




 二人が距離を置き、向かい合って、魔石を賭けた決闘が行われようとしていた。


 周囲の男達が騒いでいる中、バリスは構えと取りつつ、ニヤニヤと笑いながら、レクトに聞いた。


「…お前、そんなちゃちい槍でいいのか?」


 レクトは槍を投げるように手に持って、前傾姿勢を取った。


「ん。大丈夫だよ。」


 そう言った瞬間、いきなり、レクトは槍をバリスに向かって、高速で投げつけた。


「うぉ!」


 突然の出来事だったが、バリスが間一髪のところで槍を避けた。


 が、次の瞬間、バリスの眼前にレクトの拳が写った。




 ドガッ!!!!




 レクトに思いっきり殴り飛ばされたバリスはピクピクと身体を痙攣させて、気絶していた。


 先ほどまで騒いでいた男達は静まり返っていた。


 そんな中、レクトはゆっくりと歩いて行って、バリスの後ろにあった木に刺さった槍を抜いた。


「やっぱり、人も動物ってことか。

 避け方も一緒なんだな。」


 そう言って、周囲の男達に大声で言った。


「これで後腐れなしだ!!

 いいな!?」


 男達はハッと我に帰って、急いでバリスに寄って行き、無事を確かめた。


 そうして、レクトは目を回して気絶している少女を再び抱きかかえて、魔法少女と共にその場を後にしたのだった。




「…あなた、一体、何者なんですか?」


 3人で森を抜けている最中に魔法使いの少女がレクトに尋ねた。


 レクトは少女を抱きかかえながら、特に隠す様子もなく答えた。


「所謂、結界の「守り手」ってのをやってたんだよ。

 それでずっと、ここにいたんだけど、ここら辺は強い魔物やら獰猛な動物やらが寄ってくるんで、それなりに強いんだよ。」

「あなた!!「守り手」だったんですか!?

 …どうりで…

 …でも、どうして「守り手」がこんなところに?」

「あぁ~それはな~…」


 すると、レクトに抱きかかえられて気絶していた少女の目が覚めた。


「…あ、あれ?

 ここどこ?

 てか、エバ、無事だったんだ!!」


 レクトはやっと目が覚めたかと少女を降ろした。


 エバと呼ばれた魔法使いの少女はため息をついて、少女に事情を説明した。


「…この人が助けてくれたんですよ。

 魔石も無事です。」

「そうなんだ!!

 あんたやるじゃん!!」


 そう言って、少女はレクトのバンバンと肩を叩いた。


 レクトは期待した眼差しを少女のおっぱいに向けて、ハァハァと言いながら、少女に尋ねた。


「…約束は果たしたぞ…

 …いいんだよな…?」


 レクトは手をおっぱいの前でモミモミしながら、返事を待っていた。


 少女は笑って、レクトに答えた。


「あはは~いいよ~~

 どうぞ~~」


 レクトは少女の返事が聞いて、手を震わせながら、ゆっくりとその豊満なおっぱいに触れた。




 カチッ




「…えっ?

 ……あれ?」



 カチッ…カチカチッ…




「…嘘だろ…

 …おっぱいって、こんなに硬いの…?」


 レクトの触れているおっぱいは岩のように硬かった。


 レクトはあまりの硬さに呆然として、直ぐにおっぱいから手を離した。


 少女はそんなレクトの様子を見て、大笑いした。


「あはは~~はい、終了~~~

 じゃあ、種明かし~~~」


 魔法使いの少女はため息をついて、持っていた杖を少女のおっぱいにかざした。


 すると、少女のおっぱいは見る見る間に、小さくなっていった。


 来ていた服も何故かおっぱいの大きさに合わせて縮んでいった。


 レクトは呆然として、固まっていた。


「いや~~おっぱい大きい方が男の人、誘惑しやすいからさ~~

 普段は魔法で大きくしてもらってるんだよ~~

 硬いけど、見た目は柔らかそうだったでしょ?

 これをできるのがエバのすごいところなんだよ~~」

「…おっぱいを大きくするために魔法使いになった訳じゃないんですが…」


 魔法使いの少女は呆れて、ため息をついた。


 一方、まだ固まっているレクトに少女が声を掛けた。


「ねぇ?そう言えば、自己紹介がまだだったね。

 私はアンリ、で、この子がエバ。

 私達はエバの宝物を探して回ってるの。

 君は?名前なんていうの?」


 レクトはアンリの言葉を聞いて、我に帰ったが、物凄くがっかりした様子で、アンリに答えた。


「…レクト…おっぱい揉むために旅に出てる…」


 アンリはレクトの正直な言葉にまた大笑いして、エバはゴミを見るような目でレクトを見つめていた。


 笑いが落ち着いた後、アンリはレクトに言った。


「レクト。私達と一緒に来ない?」


 レクトは拗ねて、いじけていた。


「…なんでだよ…お前ら二人ともおっぱい小さいから、もういいんだけど…」

「いや、おっぱい揉みたいなら、女の子連れてた方がいいと思うよ?

 女の子って、男にいきなり声かけられても警戒するからね。

 女の子連れてるってだけで、声かけやすくなると思うよ?」


 レクトは立ち上がって、アンリの手を強く握った。


「…よろしくお願いします!!」


 アンリは笑いながら、レクトに返事した。


「あはは~よろしく~~」


 エバはうんざりした様子だった。


「…こんな男とこれから旅をするのですか…」


 続く

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