第14話 亘一、壁の壁になる

 ぬりかべが現れなくなったとはいえ、姫と佐和山のカノジョとの間で話し合いでもしたのか、お昼ご飯を姫は佐和山のカノジョの席で食べ、佐和山のカノジョが姫の席に座るという座席交換を2人はすることにしたらしい。やはりいくら顔が良いとはいえ、姫はぬりかべが嫌だったんだなと思った。


 でも、もうぬりかべは来ないのではと油断をしてた数日後、急にぬりかべが、授業合間の休み時間に現れた。さすがに逃げられなかった姫は顔を隠すようにタオルを被って丸まって寝てるようにうずくまった。それを見たぬりかべが、


「寝ちゃったよ。あのタオル取っちゃえよ。」


と前の女子に命令したのだ。


「やだ、あんたがやりなさいよ。」


「お前がとれよ」


2人が揉め始め、ぬりかべはあろうことか、スマホのカメラを起動し始めた。


 寝顔を盗撮するつもりだ!


 そう気づいたとたん、頭に血が昇り、自分の上着を持って飛び出して姫の身体にかけ、ぬりかべに立ちはだかり


「やめろ。」


ずっと言いたかったことを言って睨んだ。


ぬりかべは


「なんだ。男つきかよ。早く言えよ。」


と言い合いをしていた女子に吐き捨てるように言って教室を出て行った。


 俺が勝手にほっとしていると、後ろから


「大丈夫だった?なんか、写真撮ろうとしてたみたいだからさ。」


「あ、ありがとう」


「いや、こんなばっちいのでごめんね。」


「これ、相井さんが?」


「いや、あいつのだけど気にする事ないよ。」


という可愛い姫の声と妙にカッコいい声の相井との会話が聞こえてきた。はっとして振り向くと姫が悶絶するくらい可愛いカレ学ランならぬ俺の学ランを頭から被って顔を揚げていた。いや、実際、可愛い可愛いと叫ばないように口を抑えていると


「佐藤さん、ありがとう。」


と照れながら学ランを返してきた。


「いや、」


となんとか普通の声を出すと


「これから気をつけようねー。あいつ。危ねえ奴だな。」


相井が姫に優しく声かけし


「仁藤お前もう、あの変な奴教室呼ぶなよな。今度あいつ来たらどうなるか考えろよ。」


と前の女子への注意をした。そして俺はズルズルと相井にひきづられて席に戻る事となった。

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