第13話 亘一の前に壁現れる

 最近、お昼休みに姫を観察しづらくなった。姫の後ろの女子、俺の前だが、そこに他クラスの男子が遊びに来るようになったからだ。こいつがなんだかデカい。水球選手的な肩幅に180はあると思われる身長、俺の好みでは無いが、前の女子が褒めるんだから良いであろう顔を持ってして姫の後ろに立ちはだかる。ぬりかべとあだ名をつけてやったせいか毎日来るようになった。


 俺的には姫が見えなくなるため、いちゃつくなら廊下でやれといつ言ってやろうかと機会を窺ってうかがっていたのだが、廊下に行くはずがなかった。


 だってぬりかべのターゲットは姫なのだから。


 前の女子と話しているフリをして姫の荷物を覗く。姫がノートを出せばノート。スマホを開けば、画面を。首や身体の向きがもう。その様子に俺以外のクラスメイト達も気付き、次第に皆でチラチラ観察するようになった。

 

 最初は佐和山が助けようとしたらしく姫に話しかけ、仲良しをアピールしていたが、何せカノジョ共々ともども校内でも有名なリア充なため、ぬりかべは全然気にしなかった。ドンマイ佐和山。


 次に佐和山のカノジョが姫を守ろうとした。姫が弁当を取り出そうと手提げを開くとやっぱりぬりかべはその中を覗く。佐和山のカノジョは走っていって


「亜理子ちゃん、私今日こっちで食べていいかな?」


台詞せりふはありがちな普通な感じだが、両手を広げ、足を広げ、手提げに覆いかぶさる感じだ。おい、バスケのディフェンスかと突っ込みたくなったが、その必死な感じがやっぱりぬりかべの行動は俺の気にしすぎでは無く変なんだよなと確信するには充分だった。しかし、180のぬりかべのネズミにはなれなかったようだ。(絵本のネズミの嫁入りを思い出してしまったよ。)ぬりかべは気にもかけずに長身を活かしてなおも姫の周辺をジロジロと見ているのだ。


 これが佐和山カップルに火をつけた。なんと次の日には昼休みにイチャつくという暴挙に出始めたのだ。カノジョが佐和山の膝の上に座り、プチトマトをあーんとかやっている。その上フルーツトマト以上の糖度の会話をし始めた。


「ねぇ、サワくん」


「なんだいノリ」


「なんかここ狭いわ。」


いや、それ膝の上だからだろと心の中で盛大に皆が突っ込んだと思われるが、佐和山は違うらしい。


「なにがノリに狭さを感じさせてるんだい?」


「なんかあの他クラスの背が高い人がずっとノリの事みてくるの。ノリ、怖い。」


「なんだって?俺のノリを見るなんて!俺が守ってやる。」


ガバっと佐和山がカノジョを抱きしめた。

この勘違い発言とカップルの糖度にぬりかべは耐えられなくなったのかそそくさと退散し、それからひとまず昼休みは来なくなった。


 捨て身の守りにこれ以降このカップルはクラスの賞賛を集め殿堂入りした。そんな事はどうでも良いか。

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