第32話 スピンオフ タルタルエビその後の後
大崎目線
『近いうち下校デートしたいです♡』
朝におはようのスタンプとともにこんなメッセージが送られてきた。真帆からだ。あれから亘一のせいでバレー部内ではカレカノ扱いされている。俺は付き合って等の告白も無しに真帆とリア充になってしまった。可愛いから良いけど。姫そのまま保存会からはお叱りを受ける事案だが、相井が気づかないでいるのか何も言われない。もしかしたら、姫そのまま保存会もこうやって隠れ脱落者が出ているのかもしれない。
真帆と付き合ったとしても俺はすぐ卒業だ。大学が遠かったらそうそう部活に顔も出せない。
『今日は塾が無いから自習室で勉強して帰る。部活終わったら連絡して』
返信しながら、いろいろハッキリさせないといけない。そう思った。
18時10分頃に
『部活終わりました!今から自習館へ向かいます。』
と連絡が来て荷物をまとめる。自習室や講義室が3階建に詰め込まれたこの館は卒業生の寄付で建てられ通称自習館と呼ばれ、土日も校舎が閉まった後も夜19時半まで開いていて受験生の心の拠り所だ。勉強デートしている男女もいるけどな。亘一とか。
「大崎先輩!」
校則を守ってきちんと制服に着替え直して真帆が待っていた。
「待たせたか?」
「今来たとこです。」
「部活どうだ?」
真帆はあだ名の由来を知っているんだろうか。後ろ一本に三つ編みしてあるのがエビみたいで白っぽいシュシュがタルタルに見えたという。今日のシュシュは赤いから亘一ならケチャップとか言いそうだ。いや、エビチリか?と半ば別の事に意識を飛ばしていると、
「聞いてます?大崎先輩。今日はなんであだ名をそのまま使うように引き継ぎしたのか知りたくてデートに誘ったんです。」
と真帆に詰問されてしまった。
あだ名を残してくれと言ったのは、秋に三年の元部長が書く事になっている文集とか卒業式の色紙とかまだ残っている部活絡みの出来事で亘一が混乱するからだ。その度にいちいち聞かれたり、はたまた亘一が仕事放棄して俺に丸投げしてきても面倒だから、俺達が卒業するまではと。
「その上、練習メニューも変な名前のままで!」
それは頼んでない。確かに女子には嫌なネーミングかも知れない。だが、パンチラは何も女子のパンツを指してるわけではない。男子だってゴムが緩めば走ってるうちに上からとか可能性は否めない。谷間は大野にもある。女子がちょっと自意識過剰ではないか。なんて言ってもなー。
「馬鹿だな。あだ名は、真帆の名前を他の奴に呼ばれたくないだけだ。練習メニューはそのうち淘汰される。真帆が騒ぐことはないさ。」
これで正解かな?少しキモかったか?真帆の足が止まってしまったのに気づいて振り返って反応を確かめると、真っ赤な顔で、
「ダーリン、カッコ良すぎる。」
と言ってくる。ダーリン。照れる。あー可愛い。
「俺、渋谷先輩と同じ大学入れるように頑張るからな。近いし、うちの高校とも連携してるから、卒業してもバレー部指導に来れるし。真帆にも会いやすいし。」
「それって。」
更に赤くなって真帆が口をパクパクしている。もう、いろいろごちゃごちゃ考えないで全部すっ飛ばしてやっぱり俺は頑張るよ。
スピンオフfin
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