第29話 スピンオフ タルタルエビは知っている
タルタルエビ目線
「タルタルエビは田中真帆ちゃんよね。ウィンブレSね。マネージャーもウィンブレあった方が良いからね。」
初めて声をかけて下さったセリフはそれでしたが、テキパキしているバレー部女子マネの三年生の上田さんは憧れの先輩だ。OBの大学生が彼氏とか。カッコ良すぎ。もうすぐ引退されるかと思うと切ない。
女子マネの一年生は私を入れて2人。最初は部長の佐藤先輩に目を奪われて思わず入部。2人で、カッコ良さを語っていたら私はタルタルエビ、もう1人はミックスベジタブルとあだ名をつけられてしまった。二年生のマネージャーはのりたまと瓶しゃけと呼ばれていらっしゃる。その辺から「佐藤先輩はないわー」と評価はダダ下がり。
更に追い打ちをかけたのは練習メニューの下ネタサブタイトルシリーズ。評価は地の底へと落ち切った。本当に佐藤先輩は見た目とバレーだけの方だと思った。が、あれで物凄く可愛い彼女がいらっしゃる。試合を観に来たり一緒に帰っていたり何度かお見かけした。あの彼女はいろいろと大丈夫なのかとても心配だ。
こんな人が部長でよく強豪校に名前を連ねられていると思ったら副部長の大崎先輩とマネージャーの上田先輩が素晴らしかった。大崎先輩はプレーの派手さは佐藤先輩には敵わないけど、コントロールとフェイクは秀逸で、後輩にもよく目をかけていて、あだ名に染まらずちゃんと名前で呼んで下さるのだ。思わず、下ネタサブタイトルシリーズをどうして黙認しているというか、むしろ使っているのか聞いたら、
「地獄坂千本ダッシュよりパンチラ覚悟坂パンツ確認までダッシュの方がやる気が出るんだから仕方ないだろ。」
とおっしゃってました…はい。
5月末のある日、大崎先輩が雨の中傘を持って前方を歩いていると思いきや、立ち止まっているのを発見した。なんだろうと思って近づいて、私も思わず見てしまった。
佐藤先輩とその彼女が相合い傘でいちゃついてる…。
そしてそれを見て大崎先輩が凍っている。駅に向かうなら2人の側を通って行くのが近道だ。大崎先輩はお互いに夢中な2人に気づかれないように別の道へ身体を向けた。初めて見る痛々しい顔だった。指を痛めたって膝を擦りむいたって苦しい試合だってあんな顔をしない。大崎先輩と佐藤先輩はクラスも一緒で部活でもいいコンビで。
三角関係!脳内で、ピーンポーンという音が鳴った。大崎先輩の矢印が佐藤先輩ではなく、佐藤先輩の彼女に向かっていると信じて(最近はあらゆる場合を想定しないとね。)私は大崎先輩の痛々しい顔をびっくりさせて違う顔にしたくて、いきなり大崎先輩の傘に入り込んだのだ。
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