第28話 番外編 上田さんの苦労

高3の4月下旬頃。ある日の上田さん目線で。



「上田、新入生のウィンブレと練習着の注文表どうなってる?」


バレー部顧問に部活前に声をかけられた。


「私は預かってないですが、誰に頼んだんですか?」


「亘一だ。」


「確認しときます。」


なぜ、佐藤に頼むんだ!部長だからか。いや、誰だ、あいつを部長にしたやつ。心の中で騒ぎながら佐藤のクラスへ走る。


デカイ。目立つ。あそこで頭ボサボサがぽこんと出て掃除してやがる。


「あ、上田ちゃん」


と蔵瀬ちゃんが可愛く手を振ってくれた。佐藤と一緒の掃除らしい。


「蔵瀬ちゃん、掃除終わる?」


「うん、もう片付けだよ。」


「佐藤借りるね。」


佐藤は私の顔をみると分かりやすくゲッという反応をした。


「佐藤、新入生の注文表は?」


「できてるー。なーんだ。それか。注文もちゃんととっといたよ。」


あれ?意外と大丈夫?

佐藤はリュックの中からクシャクシャな紙を取り出してきた。それ、クリアファイルに入れるとか出来ないんかい、いや佐藤に多くを求めてはいけない。マネージャーは多少の我慢を強いられる。とりあえず受け取ると、


「俺、先に部活行く。提出よろしく。」


と佐藤は逃げていった。逃げた。


クシャクシャをのしのしとのばすと、意外にもパソコンで、エクセルとか使って表が作成されたものの印刷物だった。さすがあれでも理系。読めない字の解読は免れた事に安堵したが。


巨乳、ハリネズミ、あずきとぎ、バナナ足、桃ケツ、牛乳納豆、こんにゃく腹、タルタルエビ…。


もう、新入生にあだ名つけてたのか。しかもあだ名で名簿作るとか。これで注文とるとか。 



「先生、佐藤から預かってきましたが、」


前なら、直して出していたが、この際この所業が顧問にばれるが良いと思って出してやった。


「ありゃ、これじゃ分からんわー。すまないが上田、ちゃんとした名前に直してやってくれ。」


「作成した佐藤がやるべきだと思いますけど」


「いや、あいつは覚えてないだろ。忘れてた、あいつが名前覚える気がないの。今日中に頼むな。注文の期限があるんだよ。」


ご存知でしたか。


佐藤が見当たらないので、とりあえず部活中の大崎を捕まえる。


「大崎、これ分かる?」


例の紙を見せると、


「あー、このあだ名の隣の空欄、本名入れるためにあけてあるんじゃね?2年もあだ名のままの名簿じゃねーか。1年を解読すれば良いんだな?」


慣れていらっしゃる。


「巨乳は多分、大野だ。あいつの大胸筋すげーからな。ハリネズミは髪型だろ、坂本だよ。あずきとぎはちょっと…いや、多分武田だ。根拠は言えない。バナナ足は靴間違える中山だ。桃ケツは土田だ。牛乳納豆?あーこれ、館林かもしれない。後は、と、これ俺の推測だから、上田さん確かめといてくれる?本人達は把握してるはずだから。」


「佐藤がやるべきじゃん」


「だから、あいつはあだ名つけたら安心して名前覚えなくなるからいろいろ無駄だ。それよりあだ名と名前を一致させとかないと上田さんのが困ると思うぜ。」


その後、私は可愛いい一年生達に


「大野くんは巨乳ですね。ウィンブレサイズL Lですねー。」


「坂本くん、ハリネズミで間違いない?サイズMね。」


「桃ケツはLになってるけど、土田くんであってる?」


というセクハラ的な確認をして回るはめになるという。


佐藤覚えとけよ。






 

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