第5話 姫の加速度a

 頸椎捻挫が治って学校に行くと一緒に昼ごはんを食べる友達がいなくなっていた。昨年からの友人のはなちゃんは香織ちゃんにとられ、今年できた友人ののりちゃんは彼氏の佐和山と食べるようになっていた。このカップルは私を引き取ろうとしてくれたが、怪しい三角関係にしか見えないから遠慮した。大丈夫ご飯くらい、ゆっくり自席で食べれば良いのだからと自分に言い聞かせたら平気になった。


 ただ、10月の修学旅行が大問題だった。一緒に回ってくれる人がクラスにいない!同中出身の子、昨年一緒だった子の所に紛れて誤魔化したけど、クラス別行動がキツイ。気にして、彼氏持ちが彼氏ごと来るけど(佐和山と紀ちゃん)それかえって惨めみじめだったし、鬱陶しうっとおしかったし。


 キレてお昼ご飯に1人でソーキそばを食べていたら、回りが男子達に囲まれてて場違い感半端ない。


 海辺の水着もダメだった。他の女子達と相談しなかったのがいけなかったのか皆の視線が痛い。足は太めかもしれないけど、背中は弟妹を育てた筋肉で綺麗だと自信があったからぱっくり開けたデザインだった。男子がジロジロと物珍しげにみてくる。女子達にはエロいよと眉をひそめられた。大概の女子達は露出高めのビキニのくせに上にTシャツや短パンを着てた。白いワンピースタイプの水着だから露出は背中ぐらいなのだが。居た堪れない気分になって暑いのにラッシュガードを羽織るしかなくなった。


 そう、でも良い事もあった。ビーチバレーをしている佐藤さんを見てしまったのだ。ジャンプをすると捻挫しがちな私にとってあの軽さと高さのジャンプはやはり美しく羨ましく。しかも楽しそうに快活に笑う彼の笑顔が眩しかった。目がハートになるって本当だと思った。これは、バレー部マネージャーにお願いして練習試合覗きに行く。勝手に覚悟を決めていた。

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