第3話 亘一 チョコドーナツ

 ネット情報によると、男子の報われない片想いは大体3ヶ月で終わるらしい。あまり相手にされないと諦めて次にいくとか。俺も報われないまま3ヶ月が経とうとしていた。


 正月明けてからもう2年生は受験まで一年と言われテストも増え周囲も引き締まってきた。そうか、こんな感じで終わって行くのかと思われた時俺に大惨事が起こった。今度は肉体的にやられた。


 切れ痔になったのだ。


 トイレで痛みを覚えそしてペーパーに血がついてるのを見た時は思わず母に助けを求めた。とにかく痛い。家では母に強制野菜生活を強いられ、学校では板の椅子が痛い。毎休み時間嫌がらせかの様に遠くに配置された男子トイレに通う。思わずSNSにもキレぢと入れてしまうほど弱った。


 そんな時の席替え。まさかの姫の前。今一番要らない神の配慮だった。 


 席替えの次の日だった。朝、席に着こうとすると、急に姫が立ち上がりチョコドーナツを差し出してきた。正確には茶色いドーナツ形座布団だ。


「あの、これ。あまり、この色なら目立たないと思うの。」


初めて話しかけられたのがまさかの内容だった。噂の可愛い声を堪能たんのうしている場合ではなかった。


「さっきお母さんがいらしたの。私が預かってしまって。」


 頭が真っ白になりながら、受け取りそのまま使って座った。優しい座り心地だった。


 しかし真っ白になった頭はしばらく働かなかった。何が起こった?俺終わったよね?なんか強制終了だよね?


 そしフツフツと人選ミスの母への怒りと泣きたくなる思いを抱えながら母の愛のドーナツ座布団に座り続けた。


 俺はあまり痛くなくなるまで、1週間ほどであったが、意地になりながらドーナツですごしたのだった。

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